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2007年4月 アーカイブ

2007年4月10日

フレンチ警部最大の事件(Inspector French's Greatest Case)

「ポンスン」がよかったし、「樽」も面白かったので、続けてクロフツ。
この「フレンチ警部最大の事件」は、フレンチ警部初登場の作品ですが、
シリーズ化された理由がなんとなくわかるような気がします。
だって、チャーミングですもの~。ちょっと頼りないけど。

先に読んだ「クロイドン」で、わたしはフレンチ警部のことは
すでに知っていたけれど、あちらでは主役はフレンチではないせいか、
ここまでキャラクターが生きてなかったように思います。

肝心の内容ですが、「樽」の後に読むとちょっと物足りなかったです。
フレンチの描写がいいので、読み進めていけますが、
「樽」のようなピンと張ったような緊張感はないように感じました。
ですが、ラスト2章は圧巻でした。これぞクロフツ!!

ところで、次はクロフツをお休みして、横溝正史を取り上げたいと思います。
だって「樽」を読んだから。

はい、そうです。「蝶々殺人事件」です。


フレンチ警部最大の事件
F.W.クロフツ:著 / 田中 西二郎:訳
4488106048

2007年4月12日

スローターハウス5(Slaughterhouse5)

Kurt Vonnegut

ホントは「樽」つながりで「蝶々殺人事件」を、と思っていたのですが
思いがけない知らせが飛び込んできました。
ヴォネガットが、84歳の生涯を閉じたという、悲しい知らせが…。
数週間前に脳挫傷を起こしたようです。(転んで頭を打ったらしい…)
そこで、急遽ヴォネガットに変更します。

わたしが初めてヴォネガットに出会ったのは「スローターハウス5」でした。
ZELDAのアルバムに「スローターハウス」という曲があり、
その静かなクレイジーさに心惹かれました。18歳のときでした。

「ヴォネガット」という、聞いたことのない外国人作家の小説は、
SFを沢山出しているハヤカワが版元でした。
SFに免疫のなかったわたしは、ちょっと躊躇しました。
が、カバー絵の和田誠さんのからりとしたタッチとZELDAが後押しとなって
購入に踏み切りました。当時、360円くらいだったような気がします。

そこに展開されていたのは、読んだことのないような物語でした。

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2007年4月13日

蝶々殺人事件

先日のヴォネガットの訃報で、予定が逆転しましたが、
横溝正史の「蝶々殺人事件」です。
この作品は、クロフツの「樽」の発想をモチーフに描かれた作品として
知られていますし、横溝もそうだと言っています。

「樽」と「蝶々」の共通点は次の通りかと思います。

その1:死体を何かに詰めて送る。クロフツは樽、横溝はコントラバスケース。
その2:死体には、クロフツはおがくずがいっしょに詰められ、横溝は薔薇の花びらが。
その3:死体の胸元には、クロフツはメモが、横溝は100円札が。
その4:殺人が行われ死体が詰められた場所と時間を追っている。
その5:主人公(あるいは語り部)が入れ替わる。

※その5はちょっと苦しいかも…?

「蝶々殺人事件」は設定や人物の背景などがまったく「樽」とは異なるので
別物の作品としてモチロンながら楽しめます。
が、双方を読むと、意図的に横溝が取り入れた共通項をあちこちで発見できて
結構楽しいものです。

関係ありませんが、冒頭で由利先生が甘薯作りをしていたのは、
小栗虫太郎へのオマージュだったと個人的に思っています。
小栗は疎開先で生きるために甘薯をつくっており、横溝に
「砂糖が取れたら君のところにも送ってあげる」という手紙を書いていました。
そして、「蝶々殺人事件」は、もともと小栗が連載していた雑誌「ロック」に
小栗の死後、その穴を埋めるピンチヒッターとして
書くことになった経緯があるからです。
かつて、大喀血で執筆を断念しなくてはならなかった穴を埋めてくれたのが
小栗虫太郎であり、彼がいつかこまったときは自分がそのピンチヒッターを
務めると約束したという逸話も残っています。

…と、ちょっと横道にそれました。
現在、「蝶々殺人事件」は、角川文庫ではなく
「横溝正史自選集」という豪華なハードカバーの本の
第1巻に「本陣殺人事件」と一緒に収録されています。
この本には、「ロック」連載時の随筆なども収録されているので
まとめて読むにはとてもいいと思います。
が、これらの文章は、講談社オンデマンドブックスの「探偵小説五十年」や
角川書店「横溝正史自伝的随筆集」でも読むことができるので、
古本で文庫の「蝶々」を求めておいて、これらの本を読む方法もあると思います。

横溝正史自選集〈1〉本陣殺人事件/蝶々殺人事件
横溝 正史
488293308X

横溝正史自伝的随筆集
横溝 正史
404883746X

2007年4月15日

チャンピオンたちの朝食(Breakfast of Champions)

goodbye blue monday!

→「スローターハウス5」の後に書かれた1973年の作品である。
この作品には、魅力的なヴォネガットの自筆イラストが多数収められている。
そして、段落の前には「→」がつけられている。

→「人生は危険だよ、それは知ってる。それに、苦しみもいっぱいある。
だからといって、まじめなもんだとは限らんよ」
など等、キルゴア・トラウトの名言が多数収められている。
トラウトの短編小説のあらすじも、たんと収められている。
召し上がれ!

→化学物質のせいで狂っているのは、ドウェイン・フーヴァーに限ったことではない。

→感想の書きにくい作品である。わたしの知る限りでは。
「スローターハウス5」とはもともとひとつだった、という解説には納得がいく。
そういう話だ。その他いろいろ。

→解説の浅倉久志さんが粋である。彼は素晴らしい翻訳者だと思う。
1930年生まれの彼は、今年でもう77。はてなには「相当の高齢」と書いてあった。
言いえて妙である。
ただ、ヴォネガットの最後のエッセイ「A man without a country」が
浅倉さんでないことが、本音を言うと寂しい。
ラストまで浅倉節で行って欲しかった。
今、翻訳している人には申し訳ないが、許して欲しい。
それが読者のわがままというものだ。


...「チャンピオンたちの朝食」風(?)にまとめてみました。
ちなみに、現時点で、ハヤカワは絶版扱いのようです。
なんということ! 翻訳権を独占しながら!
しかも、ブルース・ウィリスによって映画にもなった作品だというのに!
(映画について語る気力は持ち合わせてないです。原作とは別物として楽しまれたし)

そんな事情なので、古本で求めるしかありません。
が、その価格がかなり流動的なので、リンクをふたつ紹介しておきます。
これから欲しいなと思う方は、適切と思われる価格のものをお求めください。
1,000円くらいで収まりますように。
(追記:2007年秋に文庫版復刊されました)

チャンピオンたちの朝食
チャンピオンたちの朝食 (1984年)
カート・ヴォネガット・ジュニア:著 / 浅倉 久志:訳
B000J75XLU
※ハードカバーのリンク。ユーズドには文庫と思われるものも入ってくるようです。

チャンピオンたちの朝食
カート・ヴォネガット・ジュニア:著 / 浅倉 久志 :訳
415010851X
※こちらは文庫のリンクです。
追記:2007年秋に復刊されました。めでたい!

Breakfast of Champions
Kurt Vonnegut
0385334206
これは原著。日本語版と見比べるとすごく楽しい。イラストの扱いがいいですよ。

2007年4月22日

青ひげ(Bluebeard)

bluebeard

「こうした偶然の一致をいちいち真剣にとっていたら、
だれでも気が狂ってしまう。この宇宙には、
自分にかいもく理解のできないことがわんさと進行中らしい、
と疑いを抱くようになる」(本文より)

1987年のヴォネガットの長編です。

戦争体験をベースに、しっちゃかめっちゃかになった
人生の回顧録である点においては、いつものヴォネガット。
「青ひげ」にはラストにオチが用意されているので、
いつもよりもちょっとわかりやすいヴォネガットかなと思います。

わたしがヴォネガットを好きな理由は、
奇跡的な出来事が、それが幸運であれ、その真逆であれ
いつ起きても、「ひとつの事実」として受け止める姿勢が
貫かれているからです。
登場人物がどんなに自分勝手でも自己中心的でも、
どんなにはた迷惑な存在でも、「存在」として尊重しているところかな。

「青ひげ」を再読して思いました。

青ひげ
カート ヴォネガット Kart Vonnegut 浅倉 久志
4150112053

2007年4月28日

英仏海峡の謎(Mystery in the channel)

クロフツお得意の海峡物です。1931年の作品。

財政破綻した証券会社の重役達が、何者かによって殺されて、
英仏海峡にうかぶヨットで発見されます。
証券会社の金庫からは、大金が紛失しており、
それによって途方もない人々が大損失を被ることに。
是が非でも、犯人をつきとめ、失われた大金を回収しなくては
大勢の何の罪もない市井の人々が、路頭に迷うことに…。

これ以上書くと、なんだかネタバレになりそう。もうかけない…。
クロフツらしさが堪能できる秀作だと思いました。

タンナーという警部が出てきますが、多分このひとは
「ポンスン事件」のタナー警部でしょう。
こんなにフランクなくだけた人だったとは。

ラストのオチがちょっぴりユーモラスでした。
が、がんばれフレンチ!

ところで、文中にフランス単語とその注釈が
カッコ内に何度となく出てきます。
これは「樽」でもでてくる表現で、正直違和感があったのですが、
おそらくクロフツが、フランス語を洒落っ気で文中にたくさん
挿入したのではないかと思い当たりました。
日本人のわたしたちが、英語を文中に織り交ぜるように。

英仏海峡の謎
F.W.クロフツ 井上 勇
4488106099

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