« フレンチ警部最大の事件(Inspector French's Greatest Case) | メイン | 蝶々殺人事件 »

スローターハウス5(Slaughterhouse5)

Kurt Vonnegut

ホントは「樽」つながりで「蝶々殺人事件」を、と思っていたのですが
思いがけない知らせが飛び込んできました。
ヴォネガットが、84歳の生涯を閉じたという、悲しい知らせが…。
数週間前に脳挫傷を起こしたようです。(転んで頭を打ったらしい…)
そこで、急遽ヴォネガットに変更します。

わたしが初めてヴォネガットに出会ったのは「スローターハウス5」でした。
ZELDAのアルバムに「スローターハウス」という曲があり、
その静かなクレイジーさに心惹かれました。18歳のときでした。

「ヴォネガット」という、聞いたことのない外国人作家の小説は、
SFを沢山出しているハヤカワが版元でした。
SFに免疫のなかったわたしは、ちょっと躊躇しました。
が、カバー絵の和田誠さんのからりとしたタッチとZELDAが後押しとなって
購入に踏み切りました。当時、360円くらいだったような気がします。

そこに展開されていたのは、読んだことのないような物語でした。

今と過去と未来を行ったり来たりするうちに
どんどん無感覚に陥っていくビリー。
笑いも乾いて、絶望を通り越した虚無が広がっていました。

この作品は、第2次大戦中に、かつてヴォネガット自身が
捕虜として収容されていた東ドイツの美しい都市・ドレスデンに、
友軍による無差別空襲を受けた体験がベースになっています。

ヴォネガットは「スローターハウス」のなかで
「次は楽しい小説を書こう」と語っています。
しかしながら、全ての彼の作品には、悲しみがまるで
クッキーの生地に練りこまれたアーモンドパウダーのように広がっています。
そして、それを包み込むクッキーの生地は、ときどきぴりりと苦く、
そして深く深く甘くやさしい。

そのやさしさに取り付かれてしまった人は、ずっと
ヴォネガットがそばにいます。

時代が多少ずれてはいたけれど、少なくとも39年間を
同じ時代に生きることができて、ほんとうによかった。
ヴォネガットのような作家に出会えて、本当によかった。
どれを読んでも、涙がでる作家。そんな作家、ほかにいるでしょうか。

大好きでした。大好きでした。
一度でいいからその姿を見たかった。新作が、読みたかったです。

so it goes.


スローターハウス5
カート・ヴォネガット・ジュニア:著 / 伊藤 典夫:訳
スローターハウス5

About

2007年4月12日 14:34に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「フレンチ警部最大の事件(Inspector French's Greatest Case)」です。

次の投稿は「蝶々殺人事件」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。