クロフツ最後の作品です。
1957年3月にこの本が発表されて、その翌月に息を引き取ったそうです。
「クロイドン」と並ぶ、倒叙ミステリです。
倒叙形式というのは、犯人目線で事件を追ったもの。
謎解きのオモシロさが半減するのでは?と思いがちですが、
よほどの悪党でない限り、犯罪のために犯罪は起こさないわけです。
もともとは平凡な人間が、いかにして犯罪者となり
罪を重ねてしまうのかが描かれている点で、
緊張感がこちらにも伝わってきて
普通の推理モノ以上にハラハラします。
この「関税品」では、前半は犯罪者目線で物語がすすみます。
前半ラストで、「さすがに気性のしっかりした彼も、
気が遠くなるような気がしたのだった」とありますが、
読んでいて、まさに自分も気が遠くなるような思いがしました。
ここがひとつのクライマックス。
後半はフレンチ警視(なんと警視に昇進!)目線で
事件を追い詰めていくさまが描かれています。
これでクライマックスか!と思ったあとに、もうひとつ
さらなるクライマックスがあり、なかなか簡単に事件は解決しません。
クロフツの長編にしては短い方なのですが、
構成の緻密さは、なかなか群を抜いているように感じました。
そして、ミステリでは後回しになりがちな文学的な要素…
人物の描写が、とても豊かに感じました。
丁寧に描かれた作品だと思います。
クロフツ作品の中では、「樽」「ポンスン」「クロイドン」
と並ぶ名作と言ってよいのでは…と思いました。
関税品はありませんか?
F.W.クロフツ:著/島田 三蔵:訳 
