映画「ブレードランナー」の原作としても名高い、
フィリップ・K・ディックの1968年作品です。
翻訳は、かの浅倉久志さん。
「訳者あとがき」で浅倉さんが太鼓判を押していましたが
この言葉に偽りなしの名作! 息をつかせぬ展開でした。
わたしが受け入れられるタイプのSFといえば
ヴォネガットやブラッドベリといった類でした。
ハードSFは言葉使いが難解なだけでなく、その世界観への
感情移入(あっ!「電気羊」のキーワード!!)が
なかなかできなくて、うーん、わたしはあんまり
SFって好きじゃないのかしら…と自信を失っていましたが
それは間違いだった、と気づきました。
第3次世界大戦がおわって、放射能に汚染されきって
荒廃してしまった地球では、生きている動物を
飼うことがステイタスになっています。
以前飼っていた、ホンモノの羊が破傷風で死んでしまい、
その代わりに電気羊を飼っているリックは
隣人が飼っている馬を見て、どうしても生きている動物が
ほしくてたまりません。
火星から逃亡している8人のアンドロイドを仕留めれば
賞金が入り、憧れている動物を買うことができる…。
…動機はいたってシリアスなはずなのですが、
あらすじにしてしまうとなんともチープな印象。
この物語が「打ち解けやすい」のは、そういう設定に
あるのかもしれません。
そして、登場するお尋ね者となっているアンドロイドたちは
みんな魅力的です。
アンドロイドをつとめて「それ」と呼ぶことにしているリックの
気持ちがぐらぐらと揺らいでいき、生きていることとそうでないことの
価値観の境目がわからなくなってくる様子が圧巻でした。
サブストーリー的に登場してくるイジドアが、リックの追求劇に
絡んでくる描写は美しい展開でしたし、
途中で、状況がひっくり返されるような描写があり、
めくらましにあっているような錯覚を覚えます。
ラストシーンは、まさに映画のようです。
あ。映画化されてるんだった。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
フィリップ・K・ディック 浅倉 久志 