江戸川乱歩「探偵小説四十年」です。
光文社文庫から上下巻で発売されています。
上巻は、戦前の探偵小説家のことや当時の文壇、
そして海外探偵文学も含めた、
乱歩らを取り巻く状況が非常に面白かったです。
アナログとか、デジタルとか、紙とか、WEBとか、
ランクや棲み分けをしている今の状況と、
当時の文壇とか大衆派とか、本格派とか変格派とかの議論に
なんだかとっても似ていて興味深かったです。
個人的には、乱歩が久作の死を大変悼んでいるのが随所にみれて
これは久作ファンとして嬉しい所でした。
そして下巻は、資料が1/3くらい取っているので、短めです。
戦時中の記録は、内田百間「東京焼盡」を思わせるところがありました。
戦争は嫌だけれど、置かれた状況は受け容れざるを得ない姿勢。
ここは共通している気がします。
昼夜逆転の生活が改まった、というのも同じ。
作家はどうやら同じような生活をしていたようです。
ただ、百間先生と大きく違うのは、乱歩は隣組などに積極的に参加して、
なんと厭人病が治ってしまった点。
上下巻を通して思ったのは、乱歩は自分で納得のいく作品が
ほとんど書けなかった人のようで、全く自身の創作活動を評価しません。
これは、「謙遜している」といったレベルではなく、
本当に自分に嫌気が差しているようでした。
とはいえ、探偵小説界の重鎮であることに変わりはなく、
そう見られていることは受け容れている。
褒められることも大好きで、切り抜き記事を全部取っておいてある。
どうにも一癖ふた癖あるお人のようだと思いました。
江戸川乱歩全集 第29巻 探偵小説四十年(下)
江戸川 乱歩 
探偵小説四十年〈上〉―江戸川乱歩全集〈第28巻〉
江戸川 乱歩 