「百鬼園日記帖」とは、若き日の百間先生の日記で、
大正時代の日記を、昭和になってから出版したものです。
そこには、いろんな家庭の雑事のために心乱され、
仕事がまったくはかどらない様がありありと描写されています。
士官学校教師をしていた百間先生は、自宅に戻ったら
依頼された翻訳をしなくてはならないのに、全然はかどりません。
家族が交代で風邪を引いたり、病気になったり、
友人の身内に不幸があって、その相談に乗らなくてはいけなかったり、
気持ちが乗らなかったり、などなど。
それで、なんだかんだで仕事が押してしまい、
翻訳の仕事をくれた人に対し、だんだん後ろめたさが募ってきます。
その切迫した描写は、自宅で仕事をしている人であれば
泣けるくらい共感を呼ぶのではないかと思います。
それにしても29歳にしてこの文章力。すばらしいです。
…29歳にしてこの借金地獄はどうかと思いますが。
なお、講談社版の全集の第3巻に収録されているものを
わたしは手にしておりますが、現在は
ちくま文庫で入手ができます。
旧かなにこだわる方は、古本をあたってみてください。
百鬼園日記帖―内田百間集成〈20〉
内田 百間