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2007年8月 アーカイブ

2007年8月 7日

黄金の灰(Golden ashes)

クロフツ1940年の作品。

一言で言えば、渋いです。
じっくりじわじわ追い詰めていく感じが、
フレンチ警視(えっ、警視!?)お得意の仕事振りです。
彼らしさに満ちています。
たとえ自信がもてなくとも、ひとつひとつ追い詰めて
ターゲットを絞っていく様子などなど。

そして、中盤以降、どんどんややこしくなってきます。
しかもラスト間際で、「読者にも(解答が)出せるはず」
なんて、クロフツが挑戦状をたたきつけてきます。
そんなこともあって、終盤は一気に読みたいところですが、
ひとつでも読み飛ばすとわからなくなるので、
ラスト30ページはかなりじっくり読みました。

最初は、あーなんか地味だなぁ~と思ったのですが
読み終えてみると、非常にクロフツらしい作品だと思いました。
「樽」に満足がいく人には、きっとよさそう。
「いぶし銀」度の高い作品です。

それにしても、クロフツおじさん、間違い多すぎ!(笑)
日付や曜日の間違いと、ドラム缶の容量など。
ゆるいな~~。さすがイギリス人。
また、翻訳が古いせいもあって(1960年)、
「ベティー」が「ベチー」となってたのもノスタルジー。
新装版では直ってるのでしょうか?

黄金の灰
F.W.クロフツ 井上 勇
4488106129

2007年8月14日

輝くもの天より墜ち(Brightness falls from the air)

輝くもの天より墜ち
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア:著/浅倉 久志:訳
4150116237

ティプトリー、1985年の長編です。550ページ超のボリューム。
「たったひとつの冴えたやりかた」の冒頭で、図書館の主任司書と
若い二人の学生(コメノというエイリアン)とのやり取りで
話題に上った作品で、今年になってようやく邦訳版が登場しました。

この長い物語は、24時間の間に起こったこと。
<ザ・スター>がダミエムという星を通過する間におきました。
ダミエムに接近するまでの前半は、楽しく明るい雰囲気
(それでもちらほらと不吉の影は落ちています)。
しかし、<ザ・スター>がダミエムを通過した途端に事態は急変し
凄惨な出来事が起こり、眼が離せなくなります。

事件が一応の解決を見せた後、まるでエピローグのように描かれる
老いと死に対する描写のすさまじさは、何でしょう。
ティプトリーの「こだわり」というにふさわしいこの描写こそが
この長い物語で一番伝えたかったことのように思います。

死とは恐れるに足らぬものとして、エレガントにすら感じる描写をするも、
老いについてはどこか自虐的に捕らえているような気がしました。
ティプトリーの壮絶な最後は(介護の必要な夫を撃ち殺した後に
自らも拳銃自殺した)やはり無視できない出来事なのかもしれません。

老いとは、正視に耐えないほどみじめなものなのだろうか。

10年、20年と年齢を重ねていけば、もしかしたら違った感想を
もてるかもしれない、と思った一冊でした。

2007年8月24日

黒い白鳥

黒い白鳥 (創元推理文庫)
鮎川 哲也
4488403042

1959年の作品。
「宝石」に1回100ページ単位で掲載されていたらしい。
冒頭に、乱歩による絶賛文が掲載されているが、いやホント、名作です。
練りに練られた、という印象で、とにかく隙がない。
複線だらけ。ささいな失敗すら、複線。
途中で「んんっ!?」と思うたび、なんどか読み返して
うう、そういうことか!と唸る。推理小説の醍醐味がある。

労組と会社との対立の最中に、社長が殺される。
社長に恨みを持つもの、社長の死によって得をするもの、の
2方向から、被疑者を絞り込んでいく。
その過程に出てくる新興宗教の存在が、もっとくさいのかな
とおもっていたら、そこはあんまりたいしたことなかった。
読者が(というかわたしが)よそに目を向けていると、
突如あまり注目していなかった人物にスポットライトがあたって
状況がぐるぐると変化してゆく。思いがけない展開に驚いた。
特に事故のシーンからの展開はすさまじいと思った。

鬼貫が聞き込みの最中に、いぶかしげな顔をする相手に対し、
「いや、これは関係者11人全員に聞いて回っているんです」云々
と述べる件があった。
これって、同時に執筆されていた「憎悪の化石」だよね。
思わずクスリ。こういう「クスッ」が、きっと随所にあるに違いない。
鮎川歴が浅いわたしには、ここのところと、
「黒いトランク」の件しか見つけられなかった。楽しいなぁ。

鮎川の作品では旅の描写が多い。モチロンこれは旅情を誘う。
電車で読むのがぴったり。
それは多くの人も認めるところだろうけど、のみならず
食べ物の描写でも振るってると思う。
鬼貫同様、わたしもお酒はいけない口だが、ビールが美味しそう。
今年みたいに暑い夏、ビール好きの人が読んだら、
絶対読後に飲むと思った。

女性の描写は、これまで読んだ中では一番好感を持った。
というか、文江がいい。
美人はこうであってほしい。かっこよかった。うんうん。

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