輝くもの天より墜ち
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア:著/浅倉 久志:訳 
ティプトリー、1985年の長編です。550ページ超のボリューム。
「たったひとつの冴えたやりかた」の冒頭で、図書館の主任司書と
若い二人の学生(コメノというエイリアン)とのやり取りで
話題に上った作品で、今年になってようやく邦訳版が登場しました。
この長い物語は、24時間の間に起こったこと。
<ザ・スター>がダミエムという星を通過する間におきました。
ダミエムに接近するまでの前半は、楽しく明るい雰囲気
(それでもちらほらと不吉の影は落ちています)。
しかし、<ザ・スター>がダミエムを通過した途端に事態は急変し
凄惨な出来事が起こり、眼が離せなくなります。
事件が一応の解決を見せた後、まるでエピローグのように描かれる
老いと死に対する描写のすさまじさは、何でしょう。
ティプトリーの「こだわり」というにふさわしいこの描写こそが
この長い物語で一番伝えたかったことのように思います。
死とは恐れるに足らぬものとして、エレガントにすら感じる描写をするも、
老いについてはどこか自虐的に捕らえているような気がしました。
ティプトリーの壮絶な最後は(介護の必要な夫を撃ち殺した後に
自らも拳銃自殺した)やはり無視できない出来事なのかもしれません。
老いとは、正視に耐えないほどみじめなものなのだろうか。
10年、20年と年齢を重ねていけば、もしかしたら違った感想を
もてるかもしれない、と思った一冊でした。