ジョナサンと宇宙クジラ (ハヤカワ文庫SF)
ロバート・フランクリン ヤング Robert F. Young 伊藤 典夫 
伊藤典夫編・訳のヤング短編集。とにかくスィートという前評判だし、この新装版のカバーのスィートさときたら!読んでみると、スィートで、ほろ苦くて、ときどきシビア。刺すような痛みさえあって、切なさが全体に覆っている。
「リトル・ドッグ・ゴーン」はまるでロードムービーのよう。ラストで思わず涙した。そして「いかなる海の洞(ほこら)に」の壮大さはどうだろう。出足はどこにでもある、気まぐれな恋愛譚。それがどんどん様変わりしていき、ラストの荘厳さに息を呑む。
この短編を編んだ伊藤さんの訳者あとがきがほんとうにいい。どんな経緯でロバート・F・ヤングに出会って、それをどんなふうに訳して雑誌に持ち込んだか。目を皿のようにして海外作品を読み、深く作品と関わり、それを日本に紹介していった翻訳家たちの、瑞々しい当時の仕事振りがうかがえる。新装版になっても、1977年当時のあとがきを収録してくれたハヤカワ文庫に敬意を表したい。新規で追加された久美沙織さんの解説もよかった。結構、後付の解説で読後感が台無しになることがあるけれど、この本はそんなこともなかった。余韻に浸れた。読後感のすばらしくよい一冊。
河出書房の「奇想コレクション」から刊行予定のヤング短編集「たんぽぽ娘」が待ち遠しい。伊藤さーん、ホントにがんばってください! 遅筆だからとか言わないで。