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木魂

「ぷろふいる」傑作選―幻の探偵雑誌〈1〉 (光文社文庫)
ミステリー文学資料館

木魂

光文社からシリーズで出ている「幻の探偵雑誌」の「ぷろふいる」傑作選に収録されている、夢野久作の短編「木魂」を取り上げる。左の挿絵は、この文庫に収録されているもので、ぷろふいる発表時の扉絵である。発表当時のイラストが数点収録されているので、この文庫はオススメ。光文社文庫は資料価値の高いものが多くていい。

これを読むと、夢野久作の文章の魔術的な魅力のとりこになり、夢中になったあの頃を思い出す。長編「ドグラ・マグラ」も凄い作品ではあるが、夢野の魅力は、短編で味わうのがいいと思う。とりわけ、「木魂」は奇想文学としてもっと取り上げられるべき一遍だと思う。

数学に対する偏執的な執着を抱く教師。この短編では「偏執」がキーになっており、妻の臨終の言葉すら偏執的に捉え、その結果、坂道を転がるように自己を追い詰めていく。子を失う描写には涙を誘うものがあり、その悲しみが、先の偏執的なものと絡み合って行く様は凄まじいの一言に尽きる。

短編作家で、こういう描写といえば、ブラッドベリやスタージョンを思い浮かべる。どうだろうか。夢野久作から入ったわたしが、自然にSFへと(それもどちらかといえば、内面を描いたSFへ)導かれてしまったのには、それなりの布石があったのかもしれない、と改めて思う。

それにしても、荒れがちといわれる夢野の文章であるが、「木魂」はなかなかどうして。独特の言い回し、底辺を流れる狂気。筆の運びもすこぶる冴えている一遍と言ってよいのではなかろうか。秀作である。

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2007年11月 3日 16:03に投稿されたエントリーのページです。

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