おそらく一種の逃避だと思いますが、今年もよく本を読んだ。古い本から新しいものまで。いろいろと。そのなかで、特に印象的だったものをピックアップ。
・「砲台島」三咲 光郎

戦時下をモチーフにした作品が多い作家さんで、実を言うと、結構突っ込みどころが多い。多いのだけど、クライマックスの壮大さには舌を巻く。凄い巧いと思う。あと引く作家さん。かなりツボです。いい編集さんと組んで、時代考証や、思想、言葉遣いを徹底しながら書いたらもっといいだろうなと思う。
・「犬は勘定に入れません」コニー・ウィリス

長いんだけど、めちゃくちゃ面白かった!「ドゥームズデイ・ブック」といい、「犬勘定」といい、キャラクターがすごくいい。とにかく巧い。大森望さんの翻訳もすばらしい。女性コトバが洗練されている。
・「黒いトランク」鮎川哲也

クロフツの「樽」を髣髴とさせるのは、設定が似てるだけじゃないと思う。読み終わったあと、もう一度読み返したくなる。重さとドラマがあるなー、と。それにしても、かなり複雑!そのあたりも「樽」といい勝負。
・「デス博士の島その他の物語」ジーン・ウルフ

比類なき物語!深読み必須。「アメリカの七夜」は謎だらけ。ラストの「眼閃の奇蹟」で、気持ちが救われた感じがした。短編集なのにね。一冊を通じてものすごかった。巧くいえないなぁ。ああ、じれったい。
・「デッドアイ・ディック」カート・ヴォネガット

今年はヴォネガット逝去のショックが大きくて、著書の大半を読み返したが、なかでも「デッド」は凄いと思った。調子がいい、構成がうまい、あっと驚くサプライズがそこかしこにある。やがてページの残りが少なくなり、物語の終わりに気がつくと読者たるわたしは、寂しい気持ちになる。
コメント (5)
早速お邪魔しますー。
『デッド…』いいですよね。
子グマは後片付けもちゃんとする…
ルディの一言一言の切ないこと。
でも不思議と慰められるんですね。
ヴォネガットの魅力は単発の言葉にとどまらないのだけど、
(ほかの記事で書かれていましたね)
そのとき感じた切なさや懐かしさや何やかやが
そのままパシッと心にしっくり落ち着いてしまう。
ヴォネガットがなくなったのは本当に残念ですが、
この言葉たちのおかげか、
もう一生分救ってもらったような気でいられます。
今度はほーかすぽーかす読み返してみます。
投稿者: ろー | 2008年1月 8日 01:23
日時: 2008年1月 8日 01:23
ろーさま、
ようこそいらっしゃいました!
>そのとき感じた切なさや懐かしさや何やかやが
>そのままパシッと心にしっくり落ち着いてしまう。
ああ、そうそう、そうなんですよ!
面白いストーリーを書く作家はたくさんいるけど、
ヴォネガットみたいな作家、なかなかいません。
わたしもいっぱい救って貰っています。
今、最後の小説「タイムクエイク」を読み返しているのですが(ああ、これで一通りになってしまった!)
彼が最後の作品と言ったのが今読み返すとわかる気がします。
「タイムクエイク」は、これまでの作品を振り返ってエッセンスを集めたような作品であり、
新規読者を受け付けない唯一の作品に思えました。
一元さんお断り。
投稿者: YOUCHAN | 2008年1月 8日 11:58
日時: 2008年1月 8日 11:58
またお邪魔さまです。
>面白いストーリーを書く作家はたくさんいるけど、
>ヴォネガットみたいな作家、なかなかいません。
僕はあまりたくさんの作家を知らないんですけど、
やっぱ稀有なんですね~!
タイムクエイクは、
なんとなく演劇のカーテンコールっていう感じですね。
「ありがとう、ショーは終わりですよ!
でもまた私に会いに来てください」
自分が見ているのはキャラ半分、生身半分の役者。
これまで惹きつけられていたのはキャラクターなんだけど、
同時にそれが生身の人間であることに安堵する、
あの感じがタイムクエイクの読後感に似ているとおもいます。ある種のネタばらしというか。
なのでやっぱり一元さんはお断り(笑)
いろんなエッセンスが詰まってますけど、
僕のクライマックスは
「さよならチクタクいう時計…」のくだりでしょうか。
何度読んでも目頭が熱くなります。
(影響で「わが町」を読みました!こちらもよかった!)
あ、
こちらは「デッドアイ・ディック」のコメントでしたね。
だらだら脱線して申し訳ございませんでした。
またいろいろ、記事読ませていただきますね。
追。
後期ヴォネガットについてレビュー(記事)を
書いている人はとても少なくて、
YOUCHANさんのブログをみてとても嬉しくなりました。
ほかの記事にもコメントさせていただきますね~!
投稿者: ろー | 2008年1月 9日 01:15
日時: 2008年1月 9日 01:15
ろーさん、
コメントを拝読するたびに、同じように感じてる方がいて、
わたしの中のヴォネガット観は間違ってなかった!と
再確認いたしました。もう孤独じゃない!
そーなんですよ。
後期ヴォネガットを読んでる人が少ない気がします。
「国のない男」がバカ売れしてるけど、書いてある内容のほとんどが、
これまで書いてきたことなのになー、と思うんですよね。
特に「タイムクエイク」は、もうかぶりまくり。
近日中にタイムクエイクのレビューを書きます。
もしよければ、またコメントくださいね。
ハイホー。
投稿者: YOUCHAN | 2008年1月 9日 11:20
日時: 2008年1月 9日 11:20
タイムクエイクのコメント、
楽しみにしております。
またお邪魔しますー。
投稿者: ろー | 2008年1月 9日 23:39
日時: 2008年1月 9日 23:39