母なる夜
カート・ヴォネガット 池澤 夏樹 
母なる夜 (ハヤカワ文庫SF)
カート,Jr. ヴォネガット 飛田 茂雄
「母なる夜」は白水Uブックス・池澤訳とハヤカワ文庫・飛田訳の2つが出版されていて、これについては甲乙つけがたい。残念なのは、後発であったハヤカワ版が入手困難になっていて、なかなか高値がついていること。池澤訳は現在も書店で平積みになっているので、「母なる夜」そのものが読めなくなったわけではないので、まだ救いがあるものの、ハヤカワ版には白水版にはないよさもあるので、とても残念に思う。
というのは、後発だったためもあると思うが、ハヤカワ版はちょっとしたオマケをつけている。それは、ヴォネガットによる「読者のみなさん」という序文が収録されている点。序文に書かれている言葉がすこぶるいい。機会がある方(あなたの街の図書館に、この本がありますように!!)は、序文だけでも目を通してほしい。復刊してもらいたい一冊。
肝心の内容は、ヴォネガットの小説の中で、最もシビアな作品と言えるが、読みやすいとも思う。自分自身がこの立場だったらどうするだろうと、ヴォネガットの作品では珍しく感情移入しながら読むことができる。「スローターハウス5」が産まれた後、フィクションの形をとりながらも、あくまでもリアリティをもったこの作品が世に出されたことは、作家にとって必要だったのかもしれない。
なお、「マザーナイト」のタイトルで映画化もされており、ラスト間際でヴォネガットもカメオ出演している。なかなか原作に忠実に作られた映画だった。(日本では未公開、ビデオのみ販売)
(追記:やっぱ「ハイ・ホー」より「ハイホー」のほうがしっくり来るなぁ...いや、どうでもいいですが)
コメント (4)
すごい勢い!(笑)
飛田訳はまだ読んだことがないのでうらやましい限りです。
和田誠さんのカバーにはおもわずテンションがあがるというもの。
実はこの作品を大学の英語の授業で読んだのが
ヴォネガットと出会うきっかけだったんですよね。
絶妙の比喩、超越的な視点、間の抜けたユーモア。
父性全開のこの作家にあっという間に魅了されたのでした。
たくさん研究論文が出ているし、
なかなか中身の濃い作品ですね。今読み返してみると。
投稿者: ろー | 2008年1月14日 21:46
日時: 2008年1月14日 21:46
うほほほほ。いや、2冊はアップをすっかり忘れていただけなんですが。
「母なる夜」から入ったんですか!
どの作品から入ってもヴォネガットは濃いなぁーってことになりそうです。
飛田版の冒頭の「読者のみなさん」にかかれている、特に印象的な一節を引用します。
この小説のテーマはこうです、と前置きしてヴォネガットはこういいました;
「われわれが表向き装っているものこそ、われわれの実体にほかならない。
だから、われわれはなにのふりをするか、あらかじめ慎重に考えなくてはならない」
投稿者: YOUCHAN | 2008年1月15日 10:50
日時: 2008年1月15日 10:50
あぁ!それだったんですね、冒頭のおまけって。
ペーパーバックで読んだときにもその文章はありました。
Make love when you can, it's good for you.てやつ。
余談ですが、
今日職場の友人に貸していた、
『デッドアイ・ディック』が帰ってきました。
すごくよかったとのこと。
初めての人にヴォネガットを進めるときは、
普段は『タイタン』を薦めているのですが、
今回の反応を見ると、『ディック』もよいのかな?って
思いました。
ところで、私大学生の時塾講師のバイトをしていたんですが、
同僚の女性の先生にヴォネガットを読んでもらいたくて
『タイタンの幼女』を薦めたところ、
たまたま本屋で手に取った『チャンピオンたちの朝食』から読み始めてしまったということがありました。
うら若き乙女のこと、さぞかし面食らったかと思いきや…
『びっくりしました、でも薦めてくれてありがとう』って
返事を意味深な微笑とともにくれました。
こちらが赤面したのを覚えております。
よき思いで哉。
投稿者: ろー | 2008年1月16日 00:40
日時: 2008年1月16日 00:40
原著には載ってたんですね。お読みになれたならよかったですー。いい序文ですよね。
「ディック」、初めての人にはいいと思います。「タイタン」もいいんだけど、一般受けするのは「ディック」じゃないかなー。
ヴォネガット風味(癖?)が受け付けない人は、どっちもダメだと思いますけど。
「チャンピオン」にまつわる思い出話も、ありがとうございました。うふふー。(←別の意味で意味深)
投稿者: YOUCHAN | 2008年1月18日 21:58
日時: 2008年1月18日 21:58