タイムクエイク (ハヤカワ文庫SF)
カート ヴォネガット Kurt Vonnegut 浅倉 久志 
最後に執筆された小説。ヴォネガットのこれまでの小説たちの総括のような作品で、この本から読むと、おそらく意味がわからないのではないだろうか。ヴォネガットが、あらゆる場所で訴え続けてきたことが書かれている。デジャ・ブのように、その記述は現れて、軽やかに去ってゆく。あれ?これどこかで読まなかったでしょうか、その他いろいろ。
新しいテクノロジーへの警鐘は「プレイヤー・ピアノ」を思い起こさせ、拡大家族の必要性は「スラップスティック」や「死よりも悪い運命」の復活のようだ。オヘアの思い出は「スローターハウス5」とともに。そしてなにより、ずっと孤独だったキルゴア・トラウトが最後の最後で独りぼっちでなくなった! 作者の優しさを感じずにはいられない。
亡くなった人々への回想は甘く優しく、ともに生きている人には厳しい気がした。先妻ジェインとの関係が悪いままでなくて本当によかった。「ヴォネガット、大いに語る」や「さよならハッピー・バースデー」のときのヴォネガットは本当につらそうだったから。
それにしても、これはやっぱり最後の本なんだなぁと思った。グランドフィナーレもあったし。あんたは病気だったが、もう元気になって、これからやる仕事がある。なんという心強い言葉! アウフ・ヴィーターゼーン。