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2008年6月 アーカイブ

2008年6月 8日

個展終わりました

5月31日で終わってたんですが、そのあとばたばたしてて、コチラでの告知を失念してました。ブログにこれから書く予定の本は以下の通り。15日過ぎないと時間ができないので、とりあえず予告です。ぼちぼち再開しまーす。

  • どろぼう熊の惑星(ラファティ)
  • 夏の涯ての島(マクラウド)
  • 星新一 一〇〇一話を作った人(最相葉月)
  • 虎よ、虎よ!(ベスター)
  • 特別料理(エリン)
  • [ウィジェット]と[ワジェット]とボフ(スタージョン)

2008年6月18日

星新一 一〇〇一話をつくった人

星新一 一〇〇一話をつくった人
最相 葉月
410459802X

久しぶりの更新。個展もようやく終わって、書くべき本が結構溜まっているが、少しずつ書いていこうと思う。ということで、再開第一弾は「星新一 一〇〇一話をつくった人」である。

厚い本ではあるが、ぐいぐい引き込む力があり、一気に読んでしまう人も少なくないと思う。取材は多岐にわたり、ええっ、こんな人まで!?と驚きながらページをめくった。ノンフィクションの面白さを十二分に堪能できる。

それにしても「星新一」。日本人ならこの名を知らない人は、あまりいないのではなかろうか。本を読まない人でも、一つ二つはショートショートを読んだことがあるのでは。たとえ記憶から滑り落ちてしまったとしても。それほどの「巨人」であるのに、星新一の執筆期間が想像よりも短いことにまず驚いた。ピークを超えた新一の「書けなくなってゆく様」は、もう切なくてたまらない。

すっごい個人的なことになるけれど、たまたまこの本を読んでいたときに、スパークスのライブ中継を連日見ていた。1971年の「Halfnelson」から、今年出たばかりの「Exotic Creatures of the Deep」までの21枚のアルバムを、一夜一枚の割で全曲演奏する、というものすごいイベントだった。今年でロン・メイルは還暦を迎える。新作を通しで聴いたのは、ライブでの公演が初めてだったけれど、正直言って還暦を迎える人が作るような音ではないと思った。弟のラッセルも今年55歳になる。21世紀に入ってから出たアルバムの方向転換振りは驚異的ですらある。

一方、星新一である。「ショートショートは40を過ぎてから書くものではない」と言う。一作一作を、身を削りながら孤独に書き続けてきた。それはわかる。わかるけれど、それにしても、ああ、老いるのが早過ぎないだろうか。孤独な作業は、そこまで心身ともに削ってしまうものなのか。スパークスのライブを見ながら(比較することではないのかもしれないけれど)、ぼんやりと星新一のことをわたしは思っていた。

星新一が生まれ育つのに、江戸川乱歩の存在がかくも大きいことにも驚いた。「探偵小説四十年」で新一に関する記述ってあったかしら?(星新一は、探偵作家ではないので仕方がないのかもしれない)

乱歩は近代日本文学の父だ。乱歩がいなかったら、ミステリはおろか、SFすら生まれなかったのかもしれない。そして、もう一人のSFの父・矢野徹の存在も忘れがたい。あとがきで、取材の申し込みの手紙を出した日に、訃報を受け取ったとあった。なんということだろう。矢野徹がいなかったら、これまた日本にSFは根付かなかったかもしれない。星製薬の衰退の様子からシフトするかのように、SFが日本に根付いてゆく過程が描かれており、大変鮮やかに感じた。SFマガジンの周辺は、綺羅星のごとく。黎明期とは、まぶしい光を放つものなんだ。

だからかもしれない、かえって新一の晩年の描写が弱いと感じたのは。物事は、常に相反する事柄がある。とはいえ、新一の作品に対する評価が、特に晩年については揺らぎすぎていて、読んでいて不安になった。ここは、最相氏の主観で良いので、がっちりとまとめてほしかった。ラスト間際の、編集者の名前と年齢を、カウントダウンのように列挙してゆく描写は鳥肌が立った。この演出、まるで映画のようだった。

あとは、細かいことになるけれど、いくつかの明らかな誤字や、間違って使われている語句などが、ちらちらと目に付いた。この手の本を読者はスピードを持って読んでいる。そこに、記述の明らかな間違いがあると、読者はつまづいてしまう。刷りをこれだけ重ねている本なので、どこかのタイミングで直していただきたいと思った。直ってるかもしれないけど。

......なんだか長くなったなぁ。面白い本だということは間違いがないので、オススメ。


2008年6月20日

虎よ、虎よ!(Tiger! Tiger!)

虎よ、虎よ!
アルフレッド・ベスター : 著 / 中田 耕治 : 訳
4150116342

長らく絶版になっていたベスターの代表作が、寺田克也の手によるイカしたカバーイラストで復刊した。ベスターはここ最近、訳書が何冊か出ていて、これから読んでみたいと思っていた。その矢先の文庫復刊は嬉しい。軽いから手軽に持ち運べるし、やっぱ機動力がちがうぜ文庫。

肝心の中身は、いやもう面白かった! 構成が映画的。小さなクライマックスがくると、その直後には静寂が。こんな鮮やかな演出に酔える。そして、ページをめくると、ジェットコースターのように持っていかれるスピード感がすごい。40年以上前に訳されたものだが、古臭さは感じなかった。時代を反映する具体的な描写がなかったのが功を奏したのかも。そしてたとえるなら、ゴチック様式に彩られた世界観、とで言おうか。

空間を自在に瞬間移動する「ジョウント」という特殊技術が、この小説の大きな鍵を握っている。テレポーテーションといった、一見シンプルなアイデアだからこそ、ここまで潔く、そして深い物語が描けているのかもしれない。娯楽作品として存分に堪能できた、すばらしい作品。映画化されないのが不思議。

2008年6月23日

Exotic Creatures of the Deep

Exotic Creatures of the Deep
Sparks
B0017PCX2K

CDなんですが、たまにはいいかー。ときどき、CDやDVDのレビューも書こうかと。

7月発売の日本盤が待ちきれず入手してしまったインポート盤。音については、ユニークとしか言いようがない。声の洪水に溺れる。DADAとバロック音楽の 融合といっていいのかしら、と思っていると、突如ドライブするリズムにかっさらわれる。コンセプトが前面に押し出された、デザインされた音楽と言おうか。いや、物語性のあるドラマチックな音楽というべきか。

その強烈な音楽の個性とは対照的に、ロンとラッセルは二人の個性をわざと後退させている印象を受けた。たとえば声。生声はほとんど聴かれない。たとえばピアノ。ノイジーなリズムがかぶさってくる。その押し込みぐあいが、なんとも不可思議な印象だった。不気味さすらある。とんでもないアルバムの登場。万人に薦めるには気がひけるが、こういう音を作ってしまう人がいることに本当に驚く。文句なしの名盤。

なお、紙ジャケの作りはなかなかチープで、まちをつけてないただの袋状なので、中身がぎゅうぎゅうになっている。日本で作ったら、ちゃんとした 「ミニチュアレコジャケ」風にできたろうに。デザインはものすごくカッコイイ。写真も、ここ10年のSPARKSのなかでは最高じゃないかと思う。

日本盤は、ボーナストラック+21夜ライブのドキュメントDVD(メイル兄弟編集)がついてくるので、それはまた改めて。2008年7月23日発売也。

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