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2008年7月 アーカイブ

2008年7月 1日

夏の涯ての島(The Summer Isles and other stories)

夏の涯ての島 (プラチナ・ファンタジイ) (プラチナ・ファンタジイ)
イアン・R・マクラウド:著 / 浅倉 久志 他:訳
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イアン・R・マクラウドという作家の作品を初めて読んだ。「夏の涯ての島」という短編集で、表題作も含め、あらゆる形式に則った愛の形が描かれている。その中でとりわけ、わたしの気持ちを強く掴んだのが、「ドレイクの方程式に新しい光を」だった。

生きるために目的を見出すのも人生、そして目的のために生きるのもこれまた人生だ。人の生きる道は、それぞれに誇り高く、そして美しい。そう思わせる作品だった。

ただ、7編ある作品のうち、ラスト2編の違和感がどうにも抜けない。5編で1冊にしてもらったほうが、余韻を邪魔せずよかったのではないだろうか。個人的な好みではあるけれど、そんな気がした。

どろぼう熊の惑星(A Lafferty Reader)

どろぼう熊の惑星 (ハヤカワ文庫SF)
R.A. Lafferty 浅倉 久志
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じつは先に読んだ「九百人のお祖母さん」は面白いことは面白かったのだが、「爆笑する」という感じはしなかった。シュールさを味わう感じじゃないのか なぁ、というのが感想だった。そして次に「どろぼう熊の惑星」に進んだ。うむ、こっちのほうが読みやすいかな。相変わらず、血は出てくるし、残酷な描写も 多いなぁ、シュールだなぁ。

...... と思っていたのだが、途中で「かちっ」とスイッチが入った。ああ、そうか! 味わい方を掴んだ瞬間だった。ラファティ・スイッチが入った途端、面白いのレベルがぎゅーんと上がった。

この「ほら吹きおじさん」の軽妙な語り口のおかげで、残酷な描写もちょちょいのちょい!というところだろう。たとえるなら、グリム兄弟やアンデル センか。ラファティという作家の作品は、いつか伝承される類のものになるだろう。小鳥が千年に一回の割合で巨大な岩をつつきにくるペースで、大きな穴があ く頃に。

求む、復刊。

猫のパジャマ(The Cat's Pajamas)

猫のパジャマ
レイ・ブラッドベリ (著), 中村 融 (翻訳)
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今年で御歳88歳のブラッドベリの最新短編集(上梓したのは2004年だけど)。いやもう、「ピンピンしているし、書いている」なんてユーモアとアイロニーたっぷりな序文タイトルに、読む側は降参するしかない。古い作品(1940~50年代)と新しい作品(2003~4年)が入り混じっているが、この人の辞書に「枯れる」という言葉はないのだろうか。年代の違いを感じない。この安定した筆力!

相変わらず、ぞくっとするようなお話もあれば、ほのぼのと心が温まるような一遍もある。「珠玉」というコトバが、ブラッドベリほど似合う人をわたしは他に知らない。毎晩、お休み前に大切に一篇ずつ読み終えていくのにふさわしい。一気に読むのがもったいない感じ。

が、個人的には、すごーくどうでもいいことなのかもしれないけど、「!?」と「?!」表記が入り混じっているのが気になってしかたがなかったのと、「バカ」という表記が「莫迦」となっていたのがなぜかひっかかった。とはいえ、今読んでいる別の本でも「バカ」は「馬鹿」ではなく「莫迦」なので、これが今のスタンダードなのかもしれない。いや、どうでもいいですな。

ところで、この本のカバーには耳がついている。これがまたカワイイので、ぜひ実物を手にとっていただきたい。なかなか耳を出して読む勇気は出ないが、なんだか小さな秘密を手にしているようで、楽しい気持ちがした。こういう洒落っ気、大歓迎。

2008年7月 6日

山魔の如き嗤うもの

山魔の如き嗤うもの
三津田信三
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「やまんまのごときわらうもの」と読む。刀城言耶シリーズ第4弾で、私自身は前回の「首無の如き祟るもの」に引き続いて2冊目となる。寝る前にいつもの感じで読んでいたのだが、読み止めるタイミングが掴めずに困るほど、次の展開が面白かった。エンターテインメントとはこういう本のことを指すのかも。

全体を覆う禍々しさもよい。夜中に読むと、結構怖いよ。山中のロッジとか、それこそ郷里で読んだらきっともっと怖いだろうなぁ。ああ、都会でよかった。成人の儀式で山を越える云々という導入は、「首無」にシチュエーションが近いので「あれ?これ読んだっけ??」と一瞬思った。が、そんなことはともかく、ぐいぐい引き込まれる。特に、父と子のありようについて、言耶自身が抱いているジレンマにもスポットが当たって、より深みが出ていい感じだと思った。金田一耕助を思い起こさせるところがあるが、キャラクター設定に今後も深みを増し、より個性的になってゆくことだろう。期待したい。

それにしても、「首無」でチラと触れられていたエピソードの織り込み方が心憎い!

2008年7月16日

ハローサマー、グッドバイ(Hello Summer, Goodbye)

ハローサマー、グッドバイ
マイクル・コーニイ:著 山岸 真:訳
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マイクル・コーニイ 1975年作品。サンリオ文庫でかつて出版されていたが、このたび待望の復刊・新訳作として話題を集めていた。

14,5 歳くらいだろうか、主人公のドローヴとブラウンアイズの瑞々しい恋愛譚を中心に、ひと夏の出来事が綴られている......という感じで2/3くらいまで 読み進めていた。が、しだいに怪しくなる雲行きに惹かれながら、ラストを迎えた。前半に描かれるような具体的情勢に比べるとラスト間際の描写は曖昧な感じ もする。読者にそのあたりの読み込みをゆだねているようにも思え、読み終えてもう一度そこだけを読み返さなくてはならなかった。ただし、読み返す価値はあ る!! これは深い。ラストの1行で救われた。鳥肌が立った。

文中で最後まで気になったのが、罵倒語の表記。たとえば「なんてことだ」のルビに「ラックス」とあったが、これは逆のほうがいいし、「氷結なたわ ごと」に「フリージングラックス」というルビもちょっと苦しいかも。その罵倒語の元になった世界観の描写はとても面白かった。なぜ異星人の住む惑星を舞台 にしなくてはならないのか、当初は少し変だなと思ったが、読み進めるうち、異なる世界を描くのに、こんなにぴったりの手法はない。

読後感としては、トーヴェ・ヤンソンの大人向け小説「誠実な詐欺師」や、バーコヴィチの「野うさぎ」を連想した。見たことも体感したこともない世 界を思うとき、行間を想像力で埋めてゆく。そんな作業がとても楽しい。ブラウンアイズのかわいらしさや、若い恋人たちのさわやかさが、ちくりと刺すような せつなさ、寂しさ、やりきれなさ(そしてラストのラストでのあの大どんでん返し!!!!)と溶けあっている。そんな小説だった。続編を期待しています。

2008年7月17日

パーマー・エルドリッチの三つの聖痕(The Three Stigmata of Palmer Eldritch)

パーマー・エルドリッチの三つの聖痕 (ハヤカワ文庫 SF (590))
フィリップ・K・ディック
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P.K.ディック 1965年作品。ドラッグによるトリップ具合といい、ぐだぐだな主人公の心象風景といい、まさにディック節炸裂! ハリウッド映画のような展開にワクワクしつつ、ラスト間際の不可解でわけのわからない描写は独特。それでも一気に読める面白さはさすが!の一言。

2008年7月29日

ひねくれアイテム

ひねくれアイテム
江坂 遊
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星新一が見出した、「ショート・ショートしか書かない作家」江坂遊のショートショート集。1篇につき数ページで完結してしまうので、気軽に読める。ちょっと皮肉の効いたオチは、オムニバスTVドラマ「世にも奇妙な物語」が好きな方ならきっと気に入るだろう。

わたしが気になったのが、特に女性の話し言葉だ。昭和40年代の作家が書いたような印象だった。小道具は今を感じさせるものばかりなのに、どこか時代錯誤な感じがする。あと10年もすると、そのズレがもしかしたら奇妙な味わいになるのかもしれないが、今はちょっとしんどいなと思った。1篇が短いせいか、オチが推測できてしまう話の運びも物足りない。海外を舞台にしたショートショートが個人的には好みだと思った。

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