ハローサマー、グッドバイ
マイクル・コーニイ:著 山岸 真:訳 
14,5 歳くらいだろうか、主人公のドローヴとブラウンアイズの瑞々しい恋愛譚を中心に、ひと夏の出来事が綴られている......という感じで2/3くらいまで 読み進めていた。が、しだいに怪しくなる雲行きに惹かれながら、ラストを迎えた。前半に描かれるような具体的情勢に比べるとラスト間際の描写は曖昧な感じ もする。読者にそのあたりの読み込みをゆだねているようにも思え、読み終えてもう一度そこだけを読み返さなくてはならなかった。ただし、読み返す価値はあ る!! これは深い。ラストの1行で救われた。鳥肌が立った。
文中で最後まで気になったのが、罵倒語の表記。たとえば「なんてことだ」のルビに「ラックス」とあったが、これは逆のほうがいいし、「氷結なたわ ごと」に「フリージングラックス」というルビもちょっと苦しいかも。その罵倒語の元になった世界観の描写はとても面白かった。なぜ異星人の住む惑星を舞台 にしなくてはならないのか、当初は少し変だなと思ったが、読み進めるうち、異なる世界を描くのに、こんなにぴったりの手法はない。
読後感としては、トーヴェ・ヤンソンの大人向け小説「誠実な詐欺師」や、バーコヴィチの「野うさぎ」を連想した。見たことも体感したこともない世 界を思うとき、行間を想像力で埋めてゆく。そんな作業がとても楽しい。ブラウンアイズのかわいらしさや、若い恋人たちのさわやかさが、ちくりと刺すような せつなさ、寂しさ、やりきれなさ(そしてラストのラストでのあの大どんでん返し!!!!)と溶けあっている。そんな小説だった。続編を期待しています。