アジアの岸辺 (未来の文学)
トマス・M.ディッシュ
先日、惜しくも自殺してしまったトマス・M・ディッシュの日本オリジナル短編で、編者は若島正。表題作含め、本邦初訳のものが多いとのことだが、現時点で邦訳済みのディッシュ作品そのものが入手しづらい現状があるので、いずれにしても貴重な一冊に変わりはない。
クールな印象から羽目を外した感覚のものまで、かなりヴァラエティに富んだ作風だった。「いさましいチビのトースター」しか知らなかったが、いや驚いた。「犯ルの惑星」と「トースター」が同じ作家の手によるものとは......。皮肉と風刺が利いた作品が多く、編者あとがきで「知的で意地の悪い作風」とあったのに納得した。収録作品の中で群を抜いて評判の高い「リスの檻」のほかでは、私個人的には「降りる」がとても気に入った。不条理以外の何者でもない、この作家の目線ときたら!
名著と誉れ高いサンリオSF文庫「キャンプ・コンセントレーション」「334」「歌の翼に」の再販を願いつつ、ディッシュの冥福を祈りたい。R.I.P.