追憶のハルマゲドン(Armageddon in Retrospect And Other New And Unpublished writings on War and Peace)
追憶のハルマゲドン
カート・ヴォネガット 浅倉 久志・訳 
ヴォネガット没後一周年を記念して出版された未発表短編集を中心に編まれた本。序文は長男のマーク・ヴォネガットによるもので、これがすこぶるよい文章で、ほんとに泣ける。身内だから書ける追悼文だと思った。ヴォネガットのすばらしさを再認識できた。
収録されている短編集の大半は、第二次世界大戦をモチーフにしたものである。ヴォネガットのエッセイで戦争について語られている本を読んでいたせいか、ちょっと身構えていたが、収録されている作品はユーモアにあふれ、爽やかさすら感じられた。人を描くことに力を注いだヴォネガットならではの着眼点だと思った。
中には、ヴォネガットにしては珍しくミステリタッチの作品がある。「サミー、おまえとおれだけだ」がそれで、これまで発表されたヴォネガットの小説の中でかなり珍しいタッチだと思う。言ってみれば倒叙法か。最初に結末を描くことを信条としたヴォネガットらしい。
唯一、戦争に関係のない作品が表題作であるが、これがどうして未発表だったかと驚いた。というのは、実を言うと、短編ではなかなかヴォネガットらしさを味わうことが難しいのだが、この短いお話の中にはそれがある。読後感はまさにヴォネガット。なぜこれを表題作にもってきたのか、判ったような気がする。
それから、これだけは言っておかなくては。やはりヴォネガットは浅倉久志訳でなくては。今回、つくづく思った。優しさとアイロニーが表裏一体になっているこの語り口こそ、わたしが知っているヴォネガットだから。
お帰りなさい、ヴォネガット。また会えて嬉しいかったです。ほんとうに、ありがとう。R.I.P.



