ベトナム系作家、リン・ディンの短編集。一篇がとにかく短い。一ページに満たないものもあり、この表現方法はいかにも詩人らしいと思った。貧困に対する恨みがましさや、その恨み辛みでゆがんだ人間性を暴き出すような作品が多く、この手の「奇妙な小説」にはあまりないタイプと感じた。リン・ディンを指して「奇想の手前」と評した文章をどこかで読んだ。彼の紡ぎだす文章表現が特徴的であって、描き出される世界観が奇妙奇天烈ではないということだろう。皮肉さと自虐がうまく混ざり合った、しかし読後感は決して悪くない不思議な感触の本。