12月は読書量が減るなぁーと思いつつ、スパートをかけたいとがんばっていたのに、いつの間にか12月31日になってしまった。今年は個展があったので、それに伴ってヴォネガット全作品を読み返したのが大きな読書イベントだったかな。ということで、今年わたしが読んでよかった本5冊をピックアップしてみたいと思う。なお、今年発売された本、ではなく、あくまでもわたしが読んだ本。長らく積読から脱出した本もあったりなかったり。余談ですがわたしはあまり積読をためない方だと思います。
追憶のハルマゲドン
カート・ヴォネガット 浅倉 久志・訳

今年はやはりコレがNo.1ではなかったかと。ヴォネガットファンとしてこの一冊がかなり早いタイミングで邦訳されたことが嬉しかったし、やはりなにより浅倉訳の安心感と来たら! 長らくこのヴォネガット口調に慣れ親しんできた読者として、ヴォネガットが帰ってきたなぁとしみじみした。
ファン目線から離れて、短編小説集としての出来を見ると、正直言って想像以上によかったのに驚いた。この短編集はヴォネガットが自ら編んだものではないので、もしかしたらヴォネガット自身は本意ではなかったかもしれない。が、ほかの短編集よりもわたしはこれが一番好きだ。
戦争をモチーフにしながらも、ペーソスたっぷりに人間性を描いた姿勢は、他のヴォネガットの長編に色濃く通じるものがある。いや、逆に「戦争をモチーフにしたから」こそ、ヒューマニストとしてのヴォネガットの良さが強調されたのかもしれない。また、ラストを飾る表題作は、ヴォネガットの長編でなければ味わえないスラップスティックぶりが堪能できる点において、この作品の発掘は大きな意義がある。短編作品の中では、代表作にしてもよい出来だと思う。イチオシ。
首無の如き祟るもの
三津田 信三

この本、去年読んだと思ったら今年だった。今年は三津田信三イヤーだった of わたし的に。クライマックスにかけて、筆の勢いでダーっと駆け上がってゆく描写ときたら、なかなか他では味わえないと思う。今年は、「首無」の続編の「山魔」もすごくよかったし(怖かった!)、デビュー作の「ホラー作家の棲む家」が「忌館」と改題して出された文庫版は、虚実入り乱れてボーダレスになっていく様子がすさまじいの一言だった。新刊が待ち遠しい作家さんの一人である。刀城言耶シリーズはキャラクターの深みが増してきているのも期待感をあおるし、長く読み継がれる作家さんではないかと思う。来年も期待しています!
横溝正史読本
小林 信彦

長らく絶版になっていて、古本でどえらい高値のついていた幻の一冊がこのたび見事復刊された。探偵小説の周辺が大好きなわたしにとっては、語られるエピソードの一つ一つが大切な宝石のように感じられた。また、インタビューの始まる前に、袴姿の正史が自身の着衣をさして、「今日は金田一スタイルで来ました」と自己紹介するくだりがなんともチャーミングで素敵だなぁと思った。インタビューとはいえども、さすが博覧強記な二人のやりとり。穏やかな中にスリリングなものがあり、一気に息をつかせず読ませる力がある。
ソラリスの陽のもとに
スタニスワフ・レム 飯田 規和・訳

名作の誉れの高いこの本、やっと今年読みました。ロマンチックで切なくて美しかった。海の描写の美しさと、ハリーの美しさの呼応がすばらしかった。登場人物が極端に少ない物語ではあるし、宇宙ステーションの中で展開される物語なのですさまじい閉塞感があり、そこがまた美しさを増長しているのかな、とも思った。しばらくしたらまた再読したい一冊。
消えた少年たち
オースン・スコット・カード 小尾 芙佐・訳

そして今年号泣した本。上巻はブラックな会社に勤めてしまったお父さんの奮闘記として泣かせるが、家族間の丁寧な描写を経て至るクライマックスはもう思い出すだけで涙腺がやばい状態になる。小さなスティーヴィーが一所懸命に体当たりで導き出した答えの切なさと、すべてが終わって新年を迎えた家族にさしのべられた優しく暖かな手を思うとき、病んだ社会にあっても人は愛情深く生きることが出来ると再認識できる。すべての人に読んでほしい傑作だと思う。ああー、涙が......。