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サイのクララの大旅行(Clara's Grand Tour)

サイのクララの大旅行―幻獣、18世紀ヨーロッパを行く
グリニス・リドリー / 矢野 真千子:訳
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時は18世紀、ヨーロッパに住む人々は、まだホンモノのサイを見たことがない。そんな時代に大陸大移動を行った、サイのクララを巡るノンフィクション。

当然のことながら、18世紀と言うことで写真はない。残っているのは、当時の画家たちが描いた絵だけ。しかも、巡業主のヴァン・デル・メールは日記を残していない。筆者のグリニス・リドリーは、クララを見て感動した人々が残した、たった一行のサイに関する記載までを丹念に拾い集め、つきあわせ、つなぎ合わせた。そして想像力の翼を大きく広げ、その記録同士の隙間を埋め、情景を浮かび上がらせる描写に成功している。明確な記録が儚いことは、ノンフィクションとしての力が弱いことかもしれない。が、そのあやふやさ故か、読者は夢うつつにこの物語を読むことが出来る。ノンフィクションでありながら、どこか幻想的だ。

たとえば、縁あってサイを手に入れたヴァン・デル・メールが、日記を残していない以上、彼が日々どんな気持ちでサイのクララと接していたかはわからない。動物好きなら、できるなら愛情を持ってクララと接して欲しいと願いながらページを繰るが、筆者はその願いに応えるヒントを探し当て、間違いのない証拠として提示する。この結論付けは、人によっては主観が入りすぎてやりすぎに感じるかもしれないが、わたしはとても気分が良かったし、優しく暖かく、ちょっぴり切ない気持ちになった。

また、ヴァン・デル・メールが、いかにして育成方法も確立していないサイの健康を維持し、3トンの巨体を持つサイを20年近くつれ回れたのか、どんな風に人々の期待感をあおったのかなど、マーケティング成功例としても読むことが出来、とても興味深かった。

難を言えば、参考画像が少なかったこと。絵を比較する記述が何か所かあったが、想像力にも限界があるので、比較の片方だけではなく、なんとかして双方を入れて欲しいと思った。造本は美しく、クリーム色の紙の上に、ブラウンの刷り文字が目に優しい。ページの端に、いつも愛らしいクララがいたのもとても良かった。ヨーロッパグランドツアーに同行できる、そんな素敵な一冊。

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2009年2月27日 13:11に投稿されたエントリーのページです。

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