Boy's Surface (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
円城 塔
あまりにも難解で意味不明とあちこちで謳われていたものだから、なんとなく手が伸びなくてうだうだしていたが、「本の雑誌」での円城氏の連載がとてもユーモラスでいい文章なので、食わず嫌いは良くないよねぇと思い、短編集を手に取ってみた。
......とても面白かった! 敬遠していた時間を返して欲しいよ。こういう作家が日本人にもいるって言うのが嬉しいじゃないですか。
子供の頃、目を閉じた世界って言うのはきっと有象無象がうごめいているに違いないとか、わたしが見ているこのカタチはあなたが把握しているものとは実は違っているんじゃないかとか、そういう想像って誰もが抱いたと思うし、未だにそういうことって延々考えることがある。人に話すと、そうかなと一蹴されてしまうことも多いし、逆に説明されてしまっても、納得いくものではない。といった「空想の世界」をまんま小説の形にして、エピソードにして盛り込んだのが円城 塔だと思う。ギャグもたくさんあった。笑いどころも満載だし。かつてYMOの「BGM」が登場したとき、これは理解できないと眉をひそめた人がたくさんいたことを思い出した。
エピソードがあちこちに飛ぶ手法は、後期ヴォネガットに通じるところがあるかな。不覚にも四本目の「Gernsback Intersection」のラストではじわっと涙が。切なかったです。ひとつだけ、四本目のレオナルド・ロンドンは一本目に出てきたベンジャミン・ロンドンと同じ名前にしておけば良かったのに、と思った。