ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
伊藤 計劃
善意の押しつけと癒しがはびこる「今」を生きる作家だからこそ書ける文学だと思った。このラストの残酷さは比類がないと思ったし、この美しさは見たことがない。想像の先を行く恐ろしさ。映画化されるんじゃないかな、と読んでる間はずっと思ったが、このラストを表現できる手段がないように思った。いろいろな意味で非常に「恐ろしく美しい」作品。
ただ、この時代背景が没個性を強いられているからかもしれないが、登場人物に魅力が今ひとつ欠ける気がした。感情移入できないし、人々の表情が浮かばない。このラストの深い表現力があるせいか、どうしても浅く感じられてしまい、そこが唯一(しかもかなり)残念だった。