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2009年6月 アーカイブ

2009年6月 3日

黒猫・アッシャー家の崩壊

黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)
Edgar Allan Poe 巽 孝之
4102028048

エドガー・アラン・ポー生誕200年を記念して編まれた短編集。

巽先生による訳文は、ポーのゴシック世界にピッタリで、まさに豪華絢爛。これまでポーの名前は常識的に知っていたのに、実は読んだことがなかった。初めて触れるポーの「黒猫」は、怖いの一言だが、どこかで読んだような気がするのは何故だろう。それにしても、幻想怪奇という言葉の源流はここにあったんだなぁと、ほぅとため息をつきながら一篇一篇を丁寧に読んだ。

ポーがそんなに昔の人であったことに改めて驚く。ポーが生きた時代には、暗闇がそこかしこにあって、幻想がいつも隣り合っていたのだろう。「ウィリアム・ウィルソン」で描かれた、へんぴな村の描写の陰鬱さにぞくぞくした。(昼間とは思えない!)

2009年6月 8日

百億の昼と千億の夜

百億の昼と千億の夜
光瀬 龍
4150300062

これまで読んだことのない程に壮大な物語だった。正直なところ、もう一回読み返さなくては、と思っている。読み込みが足りない。もっとちゃんと読まなくては、と反省している。読み飛ばしたわけではないが、展開が気になって、先を急いで読みすぎてしまった。読み飛ばしてはいけなかった。そのラストにショックを受けた。

そんな状況なので、感想らしい感想が書ける状態ではない。けれど、一つだけ言えるとしたら、果てしなく続くその「終末」に息をのんだ、ということだけだ。「無」と「終」は違うものなのだけれど。

2009年6月10日

忌野清志郎 1951-2009

忌野清志郎 ロッキングオンジャパン特別号―1951-2009
4860520815

キヨシローの訃報の後に、見聞きするキヨシ像は、なんだかどこか違う気がしたけど、これまでのインタビューを年代順に収録した本誌を読んで、キヨシのちょびっと嫌なところも含めて、わたしが知ってたキヨシだなぁと思った。例えば「Covers」のコンセプトで否定の姿勢を続ける渋谷陽一との対峙とか。ひりひりくるようなやりとりが印象的だった。キヨシローの言動には矛盾がいっぱいあった。言葉が足らないのか、気持ちに理性が追いついてないのかわからないけど、そんなとこもひっくるめてキヨシだったなって。

この雑誌、広告を一切載せなかったのもスゴイと思うんだよ。何度でも読むよ。一生保存するよ。

それから。チャボのインタビューを載せてくれてありがとう。話してくれてありがとう、チャボ。 感謝します。

2009年6月13日

1Q84

1Q84 BOOK 2
村上春樹
4103534230

スペキュレイティブ・フィクションだったね。

ところで、Book3以降はないと思う。あってもいわゆる「続き」ではないように感じる。普通にいい終わり方だと思った。作者の本意はよくわからないし、もしかしたらBook3が出るのかもしれない。けど、これで終わりでもちっともおかしくないと思った。ただ、事細かに描写した以上、読者からその伏線の回収を求められてしまうのは仕方がない。置き去りになったあれやこれやについては、正直、どうでもいいような気がすごくするのだ。普通に読めば、1000ページも費やして語られる以上、ちゃんと落としどころをつけてほしいと期待されるのは仕方がないのかもしれない。もっと説明を省いてよかったのかな。深読みの楽しさを味わうには、冗長すぎたのかも。

2009年6月19日

モルグ街の殺人・黄金虫

モルグ街の殺人・黄金虫―ポー短編集〈2〉ミステリ編 (新潮文庫)
Edgar Allan Poe 巽 孝之
4102028056

ポー短編集のミステリ編。手放しで面白い! 夢野久作ら新成年系の探偵小説にどっぷりだった頃の感慨を思い返した。これは折を見ては読み返したくなるに違いない。怪奇色もモチロンたっぷり、小説を「堪能する」といったことばがこれほど似合う作品に巡り会ったのは久しぶりだった。CDとかだと「捨て曲なし!」といったところ。捨て話なし!どれも面白い。「モルグ街」でデュパンに対し「わたし」が「ツッコミを入れ」る、といった訳文に、内心ツッコミを入れたのはナイショだ。いや、なんかこう、筆が乗ってる訳文っていうのは読んでて気持ちがいいもんです。

2009年6月20日

ロング・ドッグ・バイ

ロング・ドッグ・バイ (ミステリーYA!)
霞 流一
4652086326

これは楽しい! 犬と犬のオーナーの名前が一杯出てくるけど、犬の書き分けがすばらしい。脳内でごっちゃになることはなかった。(オーナーの名前はちょっとごっちゃになったけど)。

トリック(?)の種明かしの過程なんて結構骨太なミステリでびっくり。そんでもって、カバーを取ってもカワイイです。続編も期待できそう。文字も大きめなので、ローガンズな方々にもお勧め。ワンモア!

2009年6月21日

人くい鬼モーリス

人くい鬼モーリス (ミステリーYA!)
松尾 由美
4652086261

本当に素晴らしい小説で、今年読んだ本No.1だ。(去年出た本だけど)。知らないことで損することっていっぱいあるなぁ。知って良かった。読めて良かった。

夏休みの季節に読むと本当にぐっとくる。つまり、読むならまさに今の季節がオススメ。そして、あのセンダックのあの絵本を知ってる人ならイマジネーションがぐっと増すだろう。17歳と10歳の少女の友情も素晴らしい。物語の着地も穏やかで優しくてちょっぴり切ない。そう、こういうのを「物語」と呼ぶんだ!と思った。切なさと穏やかさと、時に激しさが迫ってくる。リアルだと思う。

これほどまで装丁と中のカットが本文のムードを盛り上げてくれる本はないと思う。一冊の本としての作りがとても美しく、丁寧で、すばらしい。贈り物にもいいんじゃないの!?

ヤングアダルトのジャンルを大きく超えて、全ての人に勧めることが出来る名作。書き出しを読み始めたら、止まらないと思う。

2009年6月26日

凶鳥の如き忌むもの

凶鳥の如き忌むもの (ミステリー・リーグ)
三津田 信三
4562042877

もともと講談社ノベルスから出ていたモノを上製本として出版。書き下ろし短編のおまけ付き。そして美しい装丁。原書房の上製版で刀城言耶シリーズは揃えたいなぁ。(あっ、それって出版社の思うツボ!?)

で、「凶鳥」。なかなか骨太な「密室モノ」だった。読んでいる間、横溝正史「本陣殺人事件」を連想していたが、「本陣」も裸足で逃げだすその謎解きにビックリ仰天した。この発想はなかった。「本陣」のときもそうだったが、舞台となった拝殿の造りを文章から脳内で組み立てるのが結構骨だった。が、しっかり読ませる。ラストの少し不思議なテイストも刀城言耶シリーズの良さだろう。

また、他のシリーズとひと味違うなと思ったのは、登場人物のかなり際だった個性だろうか。密室モノなので、人物も少なく、その分、人の描写が丁寧だったように思う。「首無」の次に気に入った。

特別書き下ろし短編「天魔の如き跳ぶもの」は、探偵小説雑誌に載るような雰囲気満載の短編でとても楽しく読めた。すっきり上手くまとまっている。阿武隈川、いいキャラだなぁ。

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