渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)
ネヴィル・シュート/佐藤 龍雄 
人類最期のときが迫る中、どう生きるか。これが最近のハリウッド映画なら、無法地帯化して、人々は残らずパニックになって、ぎゃあぎゃあとやかましい内容になっているような気がするが、この小説は最期まで穏やかだった。家庭を持つ者、持たない者、そして失った者。それぞれが選択した最期のときは、それぞれに愛おしいものだった。
もし余命を宣告されたら、どう残りの人生を過ごすか。それを考えたことは誰もがあると思う。この小説で提示された最期の過ごし方は、とても理性的で、とても穏やかで、尊厳に満ちていて、優しくて、人間味に満ちていた。静かな、穏やかな小説だった。
ただ、主人公がいつの間にかホームズからタワーズにすり替わっていたこととか、出てくる女性陣の誰にも共感がもてないとか、根本的なツッコミはある。しかしながら、それを凌ぐ魅力があると思った。タワーズが家族のお土産を買うシーンでもう涙、涙。ホッピングを見たら「渚にて」を思い出すに違いない。関係ないが、タワーズのことはずーっと脳内でデヴィッド・バーンの容姿に変換されていたことも記しておく。