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2009年12月 アーカイブ

2009年12月26日

フロム・ヘル(From Hell)

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アラン・ムーア 作 / エディ・キャンベル 画。近所の書店で見あたらなかったのでネットでオーダーしたのだが、実は到着するまでこれがコミックで、しかもこんなに大判の本とは知らなくてビックリした。いつものみすず書房のかっちりした本が届くのかな、挿し絵が入っているのかな、くらいに思っていたのだ。わたし自身、アメコミを読む習慣が全くないので、これ最後まで読めるんだろうか……とかなり心配したのだが、杞憂だった。これは正解、すっごい本だ。コミックならではの表現であふれていた。

リアルなキャラクター描写はもっともなことで、収集できる限りの史実からストーリーを起こしているのだ。しかも、登場人物たちは皆、どこか憎めない。さらに、だんだんと慣れて笑いどころもわかってくるようになり、もうこの世界にどっぷりとはまってしまったことがわかる。やはり白眉なのは下巻の第10章以降に尽きると思うが、そこに至るまでのたくさんの伏線に、読み終えたあとも上巻をめくってしまうことになると思う。上巻の第4章を切り抜ければ大丈夫!

なお、余談であるが、「フロム・ヘル」から発見したアーサー・ラッカムとの共通項についてBlog( このエントリーこのエントリー )に書いた。確認したら、たいしたことなくてがっかりだったのだが、おそらくこういう楽しみ方が出来るのも本書の魅力であろうと思うので、紹介する。まぁ笑ってやってください。

2009年12月27日

お日さま お月さま お星さま(Sun Moon Star)

お日さま お月さま お星さま
カート・ヴォネガット : 文 / アイヴァン・チャマイエフ : 画 / 浅倉 久志 : 訳
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ヴォネガットが唯一残した絵本で、クリスマスシーズンに合わせてなんと国書刊行会が発売した。さすが国書、造本に妥協無し。非常にリッチな仕様の大きな大きな絵本。文字ページは黒い背景。反対側のページの色がその黒に反射して、とても美しい。この美しさはこの判型だから堪能できると思う。小さなお子さんにもぜひ見て欲しい。美とはこういうことなんだろう。

ところで、ヴォネガットと言えば無神論者としてつとに有名(ただし、ヴォネガットは人が宗教を持つことは否定しない。彼の友人が、ずっと抱いていた信仰を戦争によって失ってしまったことを嘆いたこともあった)。そんな作家が描くクリスマス絵本は、造物主を取り巻くできごとが淡々と綴られている。この「起こった事柄に逆らわず流される」キャラクター描写が、いつものヴォネガットらしくていいなーと思った。浅倉久志氏の訳もヴォネガットらしさに満ちてたし。

水魑の如き沈むもの

水魑の如き沈むもの (ミステリー・リーグ)
三津田信三
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待ってました! 刀城言耶シリーズ最新刊。シリーズ中で最長ページ数らしいのだが、物語はこれまでで一番すっきりまとまってて、人間関係も複雑な中にくっきりと違いがあり、とても読みやすかった。ミステリなので、とにかく先を見てはいけない。ページをめくって何が起きるか、うっかりでも見てはいけないので、慎重にページをめくって大事に大事に読んだのだが、やはり後半戦にはいると、その先が気になって結局いつものように一気読みしてしまった。

期待通りというか予想通りというか、相変わらず推理があっちこっちに行く刀城言耶であったが、さらに転じたのにはびっくりした。作者は「キャラ クターには思い入れがない」と先日のトークショウで話しておられていたが、これまでのシリーズでも、もっとも登場人物たちに一層の深みが増していたように思う。賛否がどうやら分かれているらしい、あのたった見開きで納まってしまった静 かな幕引き、そして残された謎もわたしは大変好みだ。もう一度読み返したが、見事だと思う。なお、未読の方は既刊「厭魅の如き憑くもの」を併せて読むといいです。こうしてこのシリーズは他の作品同士、リンクし合うのかもしれない。次回作も当然期待、上下巻でもいいです!!

死の鉄路(Death on the Way)

死の鉄路
F.W.クロフツ : 作 / 中山 善之 : 訳
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クロフツが鉄道技師を辞して専業作家としてやっていこうと決意した時に書かれた記念すべき作品。イギリスの20世紀初頭の鉄道事情がものすごく丁寧に描写され、大変端正な印象の小説だった。電車に乗って旅に出る人はこの本を読むといいと思う。

が、クロフツにしては珍しく、かなり状況が二転三転するので、緊張感がずーっと途切れずに最後の最後まで持ってくる。また、ラストの緊迫した雰囲気は、読み終えたばかりの刀城言耶シリーズ(三津田信三)とは全く違ったカラーながらも、通じるものを感じ、いい本を読み終えた手応えと充実感にみたされる。

相変わらず地道なフレンチの活躍には読んでる間、なんだか頭が下がる思いがした。苦労を惜しまないその姿勢、見習わなくてはいけません。そして意外な犯人と、切ない背景。21世紀の現代に置き換えて読むことも出来る、そんな深い作品だった。それにしても、いつでも慇懃な英国紳士淑女のやりとりには毎度のことながら心洗われる。

2009年12月31日

NOVA 1

NOVA 1---書き下ろし日本SFコレクション)
大森 望 : 編
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今一番イキのいいSF作家を知るならこの本だろう。その一方で、SFという裾野の広いジャンルにあっては、 どうしても読者にとって受け付けない作風もあるのは悩ましいところ。個人的な問題で、スペースオペラと戦隊モノ(と、ついでにヒロイックファンタジー)が苦手なので(この3つが苦手でよくSFファンを名乗れるなぁワタシ……)収録作の1/3が受け付けませんでした。あと、スプラッタ系も苦手で……。と、1冊のアンソロジーでここまでヴァラエティに富んだ本も珍しいのではないかと思うが、現状のSF界はここまで豊かである、ということだろうと思う。2冊目以降、この混沌ぶり(と言っていいのかな。わたしにはそう取れたので)がどういった編集方針を辿ってゆくのか、注目したい。期待しています。

「エンゼルフレン チ」を読んだとき、ああこれはカフェで(モチロンできればミスドで)読んだらステキだろうなと思ったが、「隣人」にさしかかったら本を閉じてカフェを出た 方がいいと思った。

[余談]はたまたギブアップ

アッチェレランド
チャールズ・ストロス (著), 酒井昭伸 (翻訳) 伸
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すっごくオモシロイのはアタマではわかるのだが、全然読み進められないのだ。半分までがんばったのだけど、ダメだった。傑作だと思うのだが……。自分自身がもっと成熟した頃に再挑戦したいので、古本に出さずにしまっておく。ということで、久々のギブアップ。塩に浸かって半年くらい……。
 

2009年、読んでよかった本

翻訳物があまり読めなかったなぁ~。それが残念なところ。久生十蘭全集は年に一冊のペースで消化中!?

サイのクララの大旅行―幻獣、18世紀ヨーロッパを行く
Glynis Ridley
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ノンフィクションなのだが、資料がほとんど残されていない中、丹念に調査して描き出された18世紀の見せ物興行の記録。まるで夢のような世界がそこには展開されている。全ての人におススメしたい傑作。ラストでほろっとしてしまった。ページ隅っこのクララの小さな挿絵がまたすばらしい。


熱帯雨林の彼方へ (ライターズX)
Karen Tei Yamashita
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今年出た本ではないが、ヴォネガット好きならオススメ、ということで図書館で借りて読んだのだが、コレ傑作ですよ。ヴォネガット以来だと思った。復刊して欲しい。登場人物がみんないい加減で自分勝手で、でも憎めなくて。


ポルトガルの四月 (ハヤカワ・ミステリワールド)
浅暮 三文
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いやもう、すばらしかった! ユーモア、世界観、文体、どれをとっても大変美味しかった。磯良一氏の装丁画もすばらしくて、本丸ごと完成度が高いと思った。浅暮氏の本はもっと積極的に出版していただきたい。

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