死の鉄路
F.W.クロフツ : 作 / 中山 善之 : 訳

クロフツが鉄道技師を辞して専業作家としてやっていこうと決意した時に書かれた記念すべき作品。イギリスの20世紀初頭の鉄道事情がものすごく丁寧に描写され、大変端正な印象の小説だった。電車に乗って旅に出る人はこの本を読むといいと思う。
が、クロフツにしては珍しく、かなり状況が二転三転するので、緊張感がずーっと途切れずに最後の最後まで持ってくる。また、ラストの緊迫した雰囲気は、読み終えたばかりの刀城言耶シリーズ(三津田信三)とは全く違ったカラーながらも、通じるものを感じ、いい本を読み終えた手応えと充実感にみたされる。
相変わらず地道なフレンチの活躍には読んでる間、なんだか頭が下がる思いがした。苦労を惜しまないその姿勢、見習わなくてはいけません。そして意外な犯人と、切ない背景。21世紀の現代に置き換えて読むことも出来る、そんな深い作品だった。それにしても、いつでも慇懃な英国紳士淑女のやりとりには毎度のことながら心洗われる。