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2010年8月 アーカイブ

2010年8月 4日

フレンチ警部と毒蛇の謎 (Antidote to Venom)

フレンチ警部と毒蛇の謎 (創元推理文庫)
F・W・クロフツ 霜島 義明
4488106315

倒叙のクロフツらしい作品。「クロイドン」より「関税品はありませんか」に近い。前半の倒叙部分が半分以上を占め、なかなかフレンチが出てこないので、ば たばたに畳みかけて終わってしまうのではないかと危惧したのだが、不覚にもラストで泣いてしまった。クロフツの魅力とは、綿密な捜査の描写にあることは異 論はない。が、もしかしたら人間の弱さやもろさを見つめる眼差しの暖かさに大きな魅力があるのではと思った。大作「樽」「クロイドン」には及ばないが、大 好きな作品。文中で言及のあったシグニット号も復刊して欲しいなぁ。
 

The Perfect Host

The Perfect Host: Volume V:
The Collected Stories of Theodore Sturgeon

Theodore Sturgeon
1556432844

なんという風呂敷の広げ方! ラスト間際に登場するスタージョンに一杯食わされるような思いがしないでもないが、Perfect Hostとはそういう意味なのか……と。「[ウィジェット]と[ワジェット]とボフ」とか「孤独の円盤」とかでもおなじみと言えばおなじみの、奇妙な生命 体(というよりも霊に近い?)のお話しであった。
 

2010年8月14日

シャーロック・ホームズ最後の解決 (The Final Solution)

シャーロック・ホームズ最後の解決 (新潮文庫)
マイケル シェイボン Michael Chabon
410203613X

シェイボンの世界観が随所に行き渡った、嬉しい作品だった。150ページ程の短い中に、丁寧に描かれた老養蜂家の描写といい、少年の孤独といい、堪能し た。ところで『読書メーター』の「読書したみんなのコメント」を拝読すると、シャーロキアンよりシェイボニストの方が多いような気がする(私もそうです)。

ところで翻訳タイトルでは「シャーロック・ホームズ」と銘打たれているが、原著のタイトルはおろか、本文中にもその老人の名を明らかにすることは避けてあった。そりゃホームズ以外の何者でもないのだけれど、それでもあえて名を伏した作者の意向は汲んでもよかったように思う。そこはちょっと残念。
 

2010年8月28日

天使

天使
須永 朝彦
4336052557

端正な言葉の運びと、ある意味様式化された美しく妖しい異形の者たちの描写が大変読んでいて心地よい。退廃的ではあるものの、読み手を排除する感じがなく、最後まで楽しめた。連作とおぼしき作品群の連なりが、易しいパズルを提示されているようでもあった。それにしても天使とは、かくも残酷で美しいものであったか。
 

すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた(Tales of the Quintana Roo)

すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた (ハヤカワ文庫 FT)
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア  浅倉 久志
4150203733

不思議な話だった。そのまま読めば、ユカタン半島のキンタナ・ロー州でおきた、ちょっと不思議なものがたり、で片付きそうなものであるが、ティプトリーに よるマヤ族に関する前書きと、後書きの解説から、物語に隠された意味を示唆されているように感じた。マヤの知識がないとわからないことなのかもしれない。
 

2010年8月31日

不思議な少年44号 (No. 44, The Mysterious Stranger)

トウェイン完訳コレクション 不思議な少年44号 (角川文庫)
マーク・トウェイン 大久保 博
4042142095
 

蘊蓄が多く若干だれるところもあるが、鮮やかな展開が随所で起こり、目が離せなかった。これが100年前に書かれた物語であるとは信じがたい。100年前 にここまで神を否定することを言い切っちゃって大丈夫だったんだろうかトウェインじいちゃんは!? そして思った。この少年はトラルファマドールから来た のではないかと。トウェインがSFを書いていた(と言い切って差し支えない……よね?)事実に、実は大変驚いた。

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