くらやみの速さはどれくらい(The Speed of Dark)
くらやみの速さはどれくらい
エリザベス・ムーン 小尾 芙佐

読み終わって思う。わたしはルウが大好きだ。ラストはそれでよかったのかな……と思うけど、人生を選択する権利は誰にでもあるから。立場や状況や時代は違っても、『ノーマル』であっても、そうでなくても。それから、小尾さん! 名訳です。
くらやみの速さはどれくらい
エリザベス・ムーン 小尾 芙佐

読み終わって思う。わたしはルウが大好きだ。ラストはそれでよかったのかな……と思うけど、人生を選択する権利は誰にでもあるから。立場や状況や時代は違っても、『ノーマル』であっても、そうでなくても。それから、小尾さん! 名訳です。
華竜の宮
上田 早夕里

ここまで活字って言うのは壮大でスペクタクルな表現ができるモノなのかと、お口あーんぐりであった。プロローグからいきなりすごい。細かな点までよく練られたストーリーに、個性豊かなキャラクターたち。彼らの動向に目が離せないまま、怒濤の第6章以降はもうノンストップだった。
ラストは若干の謎が残った(キーパーソンであったあの人は、その後結局どう過ごしたのか or どうなったのか、などなど)が、作者の今後の作家活動の期待としておきたい。ブラボー!!
宇宙飛行士オモン・ラー (群像社ライブラリー)
ヴィクトル ペレーヴィン 尾山 慎二

いろんな意味でルナティックな作品であった。へラーが描いた狂気の戦争小説「キャッチ=22」の手触りを思い出した。ブラックユーモアSFと括ってしまうには、あまりにも恐ろしい。特にミチョークの独白のシーンときたら……。今後はピンク・フロイドを聴く度に、あの飛行士のことを思い出すのだろう。
ソ連がその頃抱えていた問題点や、社会情勢にまで配慮した解説が記されている、訳者あとがきの秀逸さにも触れておきたい。この短い、ちょっと人を食ったようなへんてこなSF小説との出会いは、わたしにとって今年最大の収穫であった。
女ぎらい――ニッポンのミソジニー
上野 千鶴子

わたしは女である。「女の子なんだから」と、物心ついた頃からそのジェンダーを背負いつつ、今まで、そしてこの先も毎日を過ごしている。女性蔑視の激しい業種ではないし、そんなに気になることはないと、わたしはずっと主張してきた。しかしながら、実は見て見ぬふりをしてきたのではなかろうか……。
深いところで気がついていながら、折り合いをつけて巧くやり過ごしてきた自分自身に改めて気がつかされた。目から鱗の一冊であった。「わたしは他の女とは違う」という鎧のなんと滑稽なことか!
どろんころんど (ボクラノSFシリーズ)
北野勇作 鈴木志保

どこか切なくて、まっすぐなキャラクターたちに心をぎゅっと掴まれる。アリスが回想するゴトーさんの登場シーンはちょっと涙が出た。YAとは思えない容赦のなさに拍手を送りたい。
それにしてもあの英語のタイトルは、だからそうなのか、とわたしは推論した。
異星人の郷
マイクル・フリン 嶋田 洋一

上下巻あるので、読み応え十分。中世ヨーロッパに不時着した異星人との交流の物語である。何と言っても、丁寧に描かれた14世紀のドイツの描写がすばらしい。また、折々に差し挟まれる現代パートが良い具合に物語を引き締めてくれる。発端は現代パート。「アイフェルハイム」というドイツの小さな村が、ある時代を境に突如うち捨てられてしまったのは何が原因だったのか……。この謎を探るところから、物語が始まる。
キリスト教が生活の規範となっている14世紀ヨーロッパの常識と、クレンク人の価値観。21世紀の現代人にとって、どちらも異邦人のように感じた。専門用語が飛び交う現代パートが難解であったが、ラストが実に人間味に溢れていてよかった。そして、14世紀パートを大きく支える主人公・デイートリヒの心の動きは、読み手にとっても大きな慰めになっていたと思う。 中世ヨーロッパとは、想像以上に理性的な時代であったことにも驚いた。
それにしてもペスト怖いよぅ。
時の地図
フェリクス J.パルマ 宮崎 真紀

もうもうH.G.ウエルズリスペクト! 作者はウエルズが大好きでしょうがないんだろうなぁと思った。上下巻で3部構成、特に1部と2部は恋と冒険に、3部はサスペンスに満ちている。そして作者に翻弄されながらタイムパラドックスを堪能できた。一緒に読むなら「タイム・マシン」と 「フロム・ヘル」だなぁ。
第1部と2部で展開されるインチキ臭い企みに内心うーんと思いながら、まぁそれはそれでいいよね~と思わせておいて、第3部では脅威のどんでんがえしが待っている。読み手の予想を裏切り期待に応えるというか。 ただ、第3部が駆け足なので、エピソードの読み落としが仇になり、理解できない箇所があり難渋した。(読み直して解決しましたが)。
ところでウエルズ周りのこの感じ、何に似てるんだろうと思ったが、はたと気がついた。ヴォネガット「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」で、エリオット・ローズウォーターがSF作家を激励した演説だと思い至った。