虎よ、虎よ!(Tiger! Tiger!)
虎よ、虎よ!
アルフレッド・ベスター : 著 / 中田 耕治 : 訳
長らく絶版になっていたベスターの代表作が、寺田克也の手によるイカしたカバーイラストで復刊した。ベスターはここ最近、訳書が何冊か出ていて、これから読んでみたいと思っていた。その矢先の文庫復刊は嬉しい。軽いから手軽に持ち運べるし、やっぱ機動力がちがうぜ文庫。
肝心の中身は、いやもう面白かった! 構成が映画的。小さなクライマックスがくると、その直後には静寂が。こんな鮮やかな演出に酔える。そして、ページをめくると、ジェットコースターのように持っていかれるスピード感がすごい。40年以上前に訳されたものだが、古臭さは感じなかった。時代を反映する具体的な描写がなかったのが功を奏したのかも。そしてたとえるなら、ゴチック様式に彩られた世界観、とで言おうか。
空間を自在に瞬間移動する「ジョウント」という特殊技術が、この小説の大きな鍵を握っている。テレポーテーションといった、一見シンプルなアイデアだからこそ、ここまで潔く、そして深い物語が描けているのかもしれない。娯楽作品として存分に堪能できた、すばらしい作品。映画化されないのが不思議。