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仁木悦子 アーカイブ

2007年11月28日

猫は知っていた / 粘土の犬

近所の古本屋で偶然入手した、東都書房・探偵小説大全の「多岐川恭 仁木悦子 佐野洋集」。そのうち仁木悦子を読了した。この本は、仁木悦子目当てで購入したので、大変に満足。

「猫は知っていた」は仁木のデビュー作だ。さわやかな陽光差し込むような文体がいい。この時代の小説は、女性の話し言葉に違和感を感じるものが多く、当時はそんな風に女たちは話したのかしらと首をかしげたものだったが、仁木悦子を読んで、やはりわたしが感じた違和感は正しかったんだなぁと思った。仁木悦子を「殺人のある北村薫」と称した評論もあって納得した。

本題。「猫は知っていた」は、仁木兄妹(作者と同姓同名)が事件を解決してゆくもので、その短い物語の中にかなりの人数が詰め込まれていて、久しぶりに醍醐味のあるミステリを読んだ、と思った。登場人物も魅力的で、兄妹が事件を解いていくやりとりはテンポがよく、嫌味を感じなかった。ただ、ラストの手紙がいつ書かれたものなのかだけが疑問だったが、わたしの読み込みがたらないせいかもしれないので、また読んでみようと思う。

もう1本「粘土の犬」は、また毛色が違い、これは奇想小説だった。かなり好み。「猫」が陽光きらめくさわやかな小説とすれば、「粘土の犬」は寂しさと物悲しさが渦巻いている。もっと悲惨になると久生十蘭の「母子像」になるなーと思ったり。(内容は全然違いますが)

現在、仁木悦子は入手しづらい作家の一人になっているが、「めもあある美術館」など、だれもが目にした事のある童話を書き残した人でもある。文体も美しい。再評価を望みたい。

仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈1〉夏・秋の巻
仁木 悦子
4882931788

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