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江戸川乱歩 アーカイブ

2007年5月13日

探偵小説四十年

江戸川乱歩「探偵小説四十年」です。
光文社文庫から上下巻で発売されています。

上巻は、戦前の探偵小説家のことや当時の文壇、
そして海外探偵文学も含めた、
乱歩らを取り巻く状況が非常に面白かったです。

アナログとか、デジタルとか、紙とか、WEBとか、
ランクや棲み分けをしている今の状況と、
当時の文壇とか大衆派とか、本格派とか変格派とかの議論に
なんだかとっても似ていて興味深かったです。

個人的には、乱歩が久作の死を大変悼んでいるのが随所にみれて
これは久作ファンとして嬉しい所でした。

そして下巻は、資料が1/3くらい取っているので、短めです。
戦時中の記録は、内田百間「東京焼盡」を思わせるところがありました。

戦争は嫌だけれど、置かれた状況は受け容れざるを得ない姿勢。
ここは共通している気がします。
昼夜逆転の生活が改まった、というのも同じ。
作家はどうやら同じような生活をしていたようです。

ただ、百間先生と大きく違うのは、乱歩は隣組などに積極的に参加して、
なんと厭人病が治ってしまった点。

上下巻を通して思ったのは、乱歩は自分で納得のいく作品が
ほとんど書けなかった人のようで、全く自身の創作活動を評価しません。
これは、「謙遜している」といったレベルではなく、
本当に自分に嫌気が差しているようでした。
とはいえ、探偵小説界の重鎮であることに変わりはなく、
そう見られていることは受け容れている。
褒められることも大好きで、切り抜き記事を全部取っておいてある。

どうにも一癖ふた癖あるお人のようだと思いました。


江戸川乱歩全集 第29巻 探偵小説四十年(下)
江戸川 乱歩
4334740235

探偵小説四十年〈上〉―江戸川乱歩全集〈第28巻〉
江戸川 乱歩
433474009X

2007年10月 6日

貼雑年譜

貼雑年譜 (江戸川乱歩推理文庫)
江戸川 乱歩
4061952668

「貼雑年譜」と書いて「はりまぜねんぷ」と読む。「探偵小説四十年」でしきりに引用されていたものだ。乱歩が残したスクラップブックを抜粋・スキャンして1冊にまとめたもの。なかなか大判の本で、当時の新聞の切抜きなどもリアルに再現されていて面白い。乱歩は自分のことが本当に大好きだったんだなぁと思った。新青年の新聞広告はとても面白い。「横溝君の文」とか鉛筆で注釈があったり、楽しい。個人的には夢野久作のファンなので、彼の小説が結構ひんぱんに掲載されている見出しを見るのは嬉しい。

乱歩自身はいろんな思いで貼雑帳を作ったと思うが、無責任な読者のわたしは、その当時の空気を感じ取る、ちいさなタイムカプセルのように楽しませていただいている。いい本だと思う。とても。強いて欲を言えば、カラーで再現してほしかった。

2008年8月24日

子不語の夢

子不語の夢―江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集
浜田 雄介
4774403733

江戸川乱歩と小酒井不木の手紙を収録した本。乱歩デビューから不木が没するまでのたった数年間の手紙のやり取りが収録されているが、それにしても乱歩はなんとまめな人であろうか。彼は不木から受け取った手紙をあますことなくファイリングしておいたらしい。この収集癖よ。几帳面さよ。一方、不木はといえば、手紙がずいぶん流出していたようで、今回この本が編まれた背景には、そういった状況を打破する目的もあったようである。不木書簡が乱歩よりも多いのは、乱歩が几帳面に手紙をとっておいたからと見て取れる。

この几帳面さと偏執的な性格は乱歩そのものだと感じた。江戸川乱歩とは、完全主義者で論客でビッグネームな上、自分自身に課する理想が甚だ高い人だった。乱歩にとって、周囲の評価とは裏腹に、発表する作品に心底から満足できずにいたのは、手紙のやり取りを見てもありありと伝わってくる。一方の不木から見たら、乱歩の持つ天賦の才に憧れと尊敬を抱いており、とにかく褒めちぎる。乱歩にとって不木は作家になるにあたって恩義ある先輩であり、かけがえのない存在であった。と同時に、かなり重かったろうなぁ。

不木はプロデューサー的な手腕を振るい、名古屋在住といったハンデを考慮しても周囲には人がたくさん集まっていたと思う。が、病身ゆえか寂しがり屋で、相当乱歩に気持ちを傾けていた。この温度差が切ない。最後が乱歩書簡で締められており、あて先は不木夫人である点も切なすぎる。

......といった感想を持ちえたのは、書簡の下に書かれた注釈のためであろう。この注釈がすごい! マニア的な視点でその時代背景を掘り下げ、人物像を浮かび上がらせる。注釈がこんなに面白い本はそうそうない。ホントカヨ!と読者として突っ込まずにはいられないような、ときに独断的な、往々にして客観的な解説には頭が下がる。

それにしても、付録のCD-ROM、すごいねぇ。すごいけど、できればこっちも本にしてほしい。高解像度で取り込まれた書簡や写真の数々、モニターで見るだけでは惜しい。乱歩の「貼雑年譜」と一緒に読むと楽しみ倍増の一冊。

2008年9月23日

一九三四年冬-乱歩

一九三四年冬‐乱歩
久世 光彦
4087740455

久世光彦による、実在する作家をモチーフにした創作。実によく調べてある。そして作中作「梔子姫」は本当に乱歩の手によって書かれたかのような手腕で、これにも驚く。

文中の乱歩は、乱歩が随筆などで垣間見せる、情けなく、自信がなく、寂しがりやで、自尊心が強い性格を、二倍増し程度に誇張した印象があり、ユーモラスでさえある。舞台となった張ホテルや中国人美青年の描写が実によい。艶かしく、ノスタルジックである。

ただ、ラストで提示された謎解きが結局放置されたままなのが残念。

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