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山口 瞳 アーカイブ

2007年6月15日

血族

血族
(写真は、初版版の函表紙。現在は文庫ででてるようです)

山口瞳ってあんまり好きではありません。
この作家は、とてもあまのじゃくだとおもいます。
それに、非常に男性的な視点を持つ人だとも。
そこがどうも鼻につくのです。
鼻につくのだけれど、「血族」は本当に面白かった。
好きな作家であっても好きになれない作品があるのと同じように、
好きな作家ではないのに、面白く読める作品があるのかもしれない。

なにがそんなにわたしを惹きつけたのでしょうか。
「血族」は、郷里を離れて暮らす人には
心情的に共感する点が多い作品ではないかと思うのです。
この本を読んでいた2005年5月に伯母が亡くなり、
愛知県の片田舎に行きました。
親族と会って話したり、懐かしい郷里を訪ねている間中、
ちょうど山口瞳が柏木田を訪れるくだりを
脳内でずっと反芻していた、と日記には残っていました。

境遇は人それぞれであるし、時代も違うから
この作家と私自身とがオーバーラップするということはありません。
ですが、長い年月を経て蓄積された隔たりというものが、
そこには共通して流れてはいないでしょうか。
たとえば、言葉。
その地方に暮らす人と、長らく地域から遠く離れた者とでは、
もうその語る方言は別のものになっています。
都会暮らしが長いのに無理をして出生地の言葉を話す人が
空々しいのはそのせいだと思います。
親族の中では「他人」に、より近づいているとも言えます。

この小説の場合は、山口瞳の出生のいきさつが
彼を親族の中で異端たらしめる結果になって、
彼は長らくその疎外感に苦しめられてきたのだと思います。
これは、長く地元を離れてしまった者が感じる
疎外感に根底は近いのではないかと思いました。
山口瞳があまのじゃくで、自分自身のことを真正面から
受け止めることがどうにも苦手なのは、
疎外感から身を守るために必要なものだったのかもしれない。
わたしは、その部分にいやなものを感じながら、共感してしまった。

非常に気になったので、「血族」の続編(?)とも言えるらしい
「家族」を読むことにしました。
その話は、また近いうちにここに書きます。

…わたしは本当に山口瞳が苦手なのだろうか?


血族
山口 瞳
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