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J.ティプトリー Jr. アーカイブ

2007年6月11日

たったひとつの冴えたやりかた(The Starry Rift)

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの遺作であり、
代表作のひとつです。1986年。
「The Starry Rift」を直訳せず、邦題に
「たったひとつの冴えたやりかた」を選んだセンスはスゴイ。

異性人の描写と、ヒューマンとの交流のいろいろ、
よくできてるなぁと思いました。表題作のラストは切ない。
たったひとつの冴えたやりかた、ほかに手はなかったのか
と思わないではいられない。

ただ、全体的にSF描写がちょっと嘘っぽい印象がしました。
ホーガンを読んだあとだったから、
なおさらそこが気になったのかもしれないです。
それもあって、素直に泣けなかったなぁ…。
出来としては第3話の「衝突」が一番良かった。

それにしても、死がモチーフとして描かれているのは、
ティプトリーの衝撃的な最期のせい
(寝たきりの夫を射殺して、自身も自殺した)
だったのだろうかと、ちょっと深読みしてしまいました。

…で。ここに一番文句を言いたい。
挿絵は、いらんっ!!!!
描きすぎなんだよね、ディティールを。
イマジネーションの妨げになると思った。
川原由美子氏の漫画は嫌いじゃないけど、
小説の挿画には向かないと思った。
いや、そうではなく、こういう挿絵の入っている小説は
わたしには向かない、ということなのでしょう。
この絵がきっかけで本を手に取った人もいるようなので
否定ばかりしてはいけないのかもしれない。


たったひとつの冴えたやりかた
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア:著/浅倉 久志:訳
4150107394

2007年8月14日

輝くもの天より墜ち(Brightness falls from the air)

輝くもの天より墜ち
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア:著/浅倉 久志:訳
4150116237

ティプトリー、1985年の長編です。550ページ超のボリューム。
「たったひとつの冴えたやりかた」の冒頭で、図書館の主任司書と
若い二人の学生(コメノというエイリアン)とのやり取りで
話題に上った作品で、今年になってようやく邦訳版が登場しました。

この長い物語は、24時間の間に起こったこと。
<ザ・スター>がダミエムという星を通過する間におきました。
ダミエムに接近するまでの前半は、楽しく明るい雰囲気
(それでもちらほらと不吉の影は落ちています)。
しかし、<ザ・スター>がダミエムを通過した途端に事態は急変し
凄惨な出来事が起こり、眼が離せなくなります。

事件が一応の解決を見せた後、まるでエピローグのように描かれる
老いと死に対する描写のすさまじさは、何でしょう。
ティプトリーの「こだわり」というにふさわしいこの描写こそが
この長い物語で一番伝えたかったことのように思います。

死とは恐れるに足らぬものとして、エレガントにすら感じる描写をするも、
老いについてはどこか自虐的に捕らえているような気がしました。
ティプトリーの壮絶な最後は(介護の必要な夫を撃ち殺した後に
自らも拳銃自殺した)やはり無視できない出来事なのかもしれません。

老いとは、正視に耐えないほどみじめなものなのだろうか。

10年、20年と年齢を重ねていけば、もしかしたら違った感想を
もてるかもしれない、と思った一冊でした。

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