蝶々殺人事件
先日のヴォネガットの訃報で、予定が逆転しましたが、
横溝正史の「蝶々殺人事件」です。
この作品は、クロフツの「樽」の発想をモチーフに描かれた作品として
知られていますし、横溝もそうだと言っています。
「樽」と「蝶々」の共通点は次の通りかと思います。
その1:死体を何かに詰めて送る。クロフツは樽、横溝はコントラバスケース。
その2:死体には、クロフツはおがくずがいっしょに詰められ、横溝は薔薇の花びらが。
その3:死体の胸元には、クロフツはメモが、横溝は100円札が。
その4:殺人が行われ死体が詰められた場所と時間を追っている。
その5:主人公(あるいは語り部)が入れ替わる。
※その5はちょっと苦しいかも…?
「蝶々殺人事件」は設定や人物の背景などがまったく「樽」とは異なるので
別物の作品としてモチロンながら楽しめます。
が、双方を読むと、意図的に横溝が取り入れた共通項をあちこちで発見できて
結構楽しいものです。
関係ありませんが、冒頭で由利先生が甘薯作りをしていたのは、
小栗虫太郎へのオマージュだったと個人的に思っています。
小栗は疎開先で生きるために甘薯をつくっており、横溝に
「砂糖が取れたら君のところにも送ってあげる」という手紙を書いていました。
そして、「蝶々殺人事件」は、もともと小栗が連載していた雑誌「ロック」に
小栗の死後、その穴を埋めるピンチヒッターとして
書くことになった経緯があるからです。
かつて、大喀血で執筆を断念しなくてはならなかった穴を埋めてくれたのが
小栗虫太郎であり、彼がいつかこまったときは自分がそのピンチヒッターを
務めると約束したという逸話も残っています。
…と、ちょっと横道にそれました。
現在、「蝶々殺人事件」は、角川文庫ではなく
「横溝正史自選集」という豪華なハードカバーの本の
第1巻に「本陣殺人事件」と一緒に収録されています。
この本には、「ロック」連載時の随筆なども収録されているので
まとめて読むにはとてもいいと思います。
が、これらの文章は、講談社オンデマンドブックスの「探偵小説五十年」や
角川書店「横溝正史自伝的随筆集」でも読むことができるので、
古本で文庫の「蝶々」を求めておいて、これらの本を読む方法もあると思います。
横溝正史自伝的随筆集
横溝 正史




