マイナス・ゼロ
NORIがすごく好きな作家さんで、いろいろな人から「YOUCHANも好きに違いない」と薦められてきた 広瀬正にようやく着手した。長編第一作で、解説は星新一。それにしても、古本のこの高騰ぶり、なんとかならないものか。興味を持った方が、お近くの図書館で借りられますように。
初めて読んだ広瀬正は、なんとミステリの筆致を持った作家だとわかった。壮大な謎解きにSFの手法をうまく絡めた、複雑な、しかもエンターテインメントとしても一級品の力作。長編第一作がこれというのはすごい。「ツィス」など、まだ味読……じゃなくて未読作品が控えているので、楽しみである。ページを繰る手が止まらない、とはこういう作品の事を指す。
特に、昭和初期の描写の鮮やかさは、今までになかったタッチだと思った。昭和のはじめといえば、写真でもモノクロしかないし、当時の探偵作家でさえも、描写をあえてモノトーンで描いているような印象すら受ける。が、広瀬のタッチは、色鮮やかに、たとえば銀座の町並みを描き出し、女たちの化粧についても描写する。技術的な裏づけを忘れない。ううむ、とうなる。
肝心の内容については、ネタバレになるといけないので極力控えるが、「先生」の描写がもっとあっても良かったのではないか。それから、遺伝子的にアレってどうなの!?と、タイムパラドックス以上に疑問点があった。タイムパラドックスを描いた作品のなかでは、ぎりぎり……いや、ちょっと行き過ぎちゃった感は否めないかな。そして、ラストは無理やりまとめに入りすぎてないだろうか。あっけなさ過ぎると思ったのだが……。
と、やや辛口に書いてみたものの、 面白かったことは事実。面白かったゆえに、期待値が高くなり、納得できないところについての不満が大きくなるのは、ミステリの宿命なのだ……ってコレSFだった。
復刊ブームの昨今、広瀬正の再復刊が待たれる。
