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T.M.ディッシュ アーカイブ

2007年10月 6日

いさましいチビのトースター(The brave little toaster)

いさましいちびのトースター (ハヤカワ文庫SF)
トーマス・M. ディッシュ Thomas M. Disch 浅倉 久志
4150111677

いさましいちびのトースター火星へ行く (ハヤカワ文庫SF)
トーマス・M. ディッシュ Thomas M. Disch 浅倉 久志
4150112975

「いさましいチビのトースター」は正・続の2つが出ていて、いずれも文字も大きく、挿絵もふんだん。小学生からオススメの楽しい楽しいSF小説。作家のトマス・M・ディッシュ(この本ではトーマス)は、「アジアの岸辺」が国書刊行会から出ていて、それを読む前の予習のつもりで読了。いや、予習にはならないと思うけど、ずっと気になっていたからいい機会だし。

家電製品たちが、日ごろどんな風にすごしていて、どんな思いで人に奉仕してくれているかが描かれている。新製品に飛びつくのもいいけど、やっぱり愛着もって長く使っていきたいよね。そういえば、パソコンも新製品がほしいな~とか言うと、とたんに調子が悪くなる。褒めて使うのが大事。日本では昔から「万物に神宿る」って言うじゃない。

「火星に行く」のトースターたちの工夫っぷりはすばらしいの一言!よく行けましたね。楽しくも、ちょっとほろっときたりして。こういうお話、好きです。

2008年8月 5日

アジアの岸辺(The Asian Shore)

アジアの岸辺 (未来の文学)
トマス・M.ディッシュ
4336045690

先日、惜しくも自殺してしまったトマス・M・ディッシュの日本オリジナル短編で、編者は若島正。表題作含め、本邦初訳のものが多いとのことだが、現時点で邦訳済みのディッシュ作品そのものが入手しづらい現状があるので、いずれにしても貴重な一冊に変わりはない。

クールな印象から羽目を外した感覚のものまで、かなりヴァラエティに富んだ作風だった。「いさましいチビのトースター」しか知らなかったが、いや驚いた。「犯ルの惑星」と「トースター」が同じ作家の手によるものとは......。皮肉と風刺が利いた作品が多く、編者あとがきで「知的で意地の悪い作風」とあったのに納得した。収録作品の中で群を抜いて評判の高い「リスの檻」のほかでは、私個人的には「降りる」がとても気に入った。不条理以外の何者でもない、この作家の目線ときたら! 

名著と誉れ高いサンリオSF文庫「キャンプ・コンセントレーション」「334」「歌の翼に」の再販を願いつつ、ディッシュの冥福を祈りたい。R.I.P.

2009年11月28日

歌の翼に(On Wings of Song)

歌の翼に(未来の文学)
トマス・M・ディッシュ 友枝康子:訳
433605116X

ものすごくよかった! 読み終えたくない作品だった。スタージョンが描くような音楽の世界観がディッシュにも息づいていたとは。ふと、会話やシチュエーションの断片が読み終わってだいぶ経つのに心によみがえってくる。そしてあの美しいラスト。なんてあっけないんだろう。しかし、この瞬間のために長く苦難の道をダニエルは歩いていたんだろうなぁと思った。ふさわしいラストだと思う。

読み終わった後もなお尾を引く物語。心の中でスタンディング・オベーション。ブラヴォ!

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