一角獣・多角獣(E Pluribus Unicorn)
一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)
シオドア スタージョン Theodore Sturgeon 小笠原 豊樹 
異色作家短編集第3巻のスタージョンである。このシリーズは1964年に刊行され、70年代に一度復刊された。しかし、この「一角獣・多角獣」を含む何冊かは復刊対称にならなかったため、稀少本としての価格が高騰していた。が、早川書房創立60周年記念として、復刊対象にならなかったものも含め、2005年に晴れて世に出ることとなったという、古くからの異色短編作家ファン・スタージョンファンにとっては「曰くつきも曰くつきの一冊」らしい。それにしても、この新装版の装丁の美しさときたら。ハヤカワとは思えません、なんていったら失礼かしら。ハードカバーなのに、軽いので持ち運びもラクラク。って何の紹介だ。
わたしとスタージョンの出会いは、間接的なものだった。キルゴア・トラウトのモデルになったのがスタージョンなので、この作家はどこかずっと気になる存在だった。が、以前は今ほどスタージョン本が出ている状況ではなかったので、未着手のままだったが、昨今のスタージョン祭りともいえる状況のおかげで、新しい読者にとっては、この上ない幸せな状況。ありがとう、本の神様。
「一角獣・多角獣」を一読して、これほど身につまされるような短編ってないんじゃないかと感じた。「孤独の円盤」の美しさ、孤独感への共感は多くの人の涙を誘うだろう。また、「死ね、名演奏家、死ね」の劣等感や被害妄想は誰もが抱く感情だし、それがまるで倍音のように膨れ上がっていく様子は悲しい。この短編のテーマ曲のタイトル『ダブー・ダベイ』演奏フレーズ " フー・ハー " という表現、音が聞こえてくるようですばらしかった。登場人物も魅力に富んでいる。短編とは思えない濃さ。そして、ラストの「考え方」の不気味さと凄みは、なんともいえない読後感を残す。
小笠原豊樹さんの「一角獣・多角獣」の翻訳を絶賛する書評が非常に多かった。実際読んでみて、すばらしいとわたしも思った。奇想コレクションから出ている「不思議のひと触れ」「輝く断片」は大森望さん編だから、安心して期待できる。(と思っていたら、今月またスタージョンが奇想から出ているじゃないですか!こちらは若島さん。)また、晶文社の「海を失った男」は若島正さんがSFマガジンで絶賛してはばからなかった。スタージョンの刊行環境は恵まれていると思う。21世紀はいい時代だな。




