第二文学山房

ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを(カート・ヴォネガットJr.)

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ローズウォーターさん

ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

初めて読んだヴォネガットは「スローターハウス5」だった。
ヴォネガットが気に入ったわたしは、二冊目を読んでみようと思い、
手にしたのは多分「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」だったと思う。

主人公のエリオット・ローズウォーターは、大富豪の御曹司である。
人びとの間に貧富の差があることに疑問を感じたエリオットは、富の分配が人びとを幸せにすると信じ、それを実行する。
彼のしようとしている慈悲深い行為が、崇高であると同時に、とても愚かしいことであることをヴォネガットは隠さない。
ヴォネガットは、日本の片田舎に住む一人の少女に「物事には常に相反する側面があること」を教え込むことに成功した。

とりわけ、私のお気に入りは、エリオットが言うセリフだ。
エリオットが施しを続けているローズウォーター郡のある夫婦に双子の赤ん坊が生まれ、
洗礼を頼まれていることを妻に電話で告げるシーンがある。
ぼくは宗教的な人間じゃないからと断ったが、結局頼まれてしまった夫。
妻は、その赤ん坊にどんな言葉をおっしゃるつもりなの?と問う。
そうだなぁ、こんな風に言うかな、とエリオットが話したのが、このセリフである。

こんにちは、赤ちゃん。地球へようこそ。
この星は夏は暑くて、冬は寒い。
この星はまんまるくて、濡れていて、人でいっぱいだ。
なあ、赤ちゃん、きみたちが この星で暮らせるのは、
長く見積もっても、せいぜい百年ぐらいさ。
ただ、ぼくの知っている規則がひとつだけあるんだ。いいかい
なんてったって、親切でなきゃいけないよ。

わたしはこの言葉が大好きだ。
絵にするなら、絶対このシーンだ!と思っていた。
「スローターハウス5」はヘビーな色使いになってしまったが、
ヴォネガットはやはりアメリカの作家らしいポップな色使いが似合う。
特にローズウォーターさんはラストのオチが爽快だ(ちょっときれいなオチ過ぎるような気もするが)。
ということで、この作品は、ぐっとグラフィカルで鮮やかな感じに仕上げてみた。

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