広瀬 正の小説より。私的セレクションの三大タイムトラベル作品の二つ目は、広瀬正の「マイナス・ゼロ」。今回、唯一の日本人作家である(次の機会は、もっと日本人作家も増やしたいと思う)。わたしはタイムトラベルモノが好きなんだなぁとよくわかった。夢ですな。ロマンですな。
「マイナス・ゼロ」とよく引き合いに出されるのが「夏への扉」なのだが「犬は勘定に入れません」のほうが近いのではないかと感じた。「マイナス・ゼロ」と「犬は勘定に入れません」の大きな類似点は、推理小説の筆致を持っている点だと思っている。「夏への扉」「マイナス・ゼロ」と「犬は勘定に入れません」とでは発表年に隔たりがありすぎるので、引き合いに出すことそのものが稀有なんだろうと思うが、あくまでも個人的な選択肢、ということで。他にもタイムトラベル小説はもっとたくさんあるだろうし。
「マイナス・ゼロ」に話を戻そう。今回、空襲のシーンを構図に取り入れる際、内田百間の「東京焼尽」の空爆の描写に、飛行機の腹がいもりのように不気味に赤く見えたとあったのを思い出し、少し取り入れた。今回の展示で百間先生の名前が出てこようとは誰も思うまい。ふふ。(ってこれ以上は出ませんが)
この「マイナス・ゼロ」は、壮大な謎解きにSFの手法をうまく絡めた、複雑な、しかもエンターテインメントとしても一級品の力作だと思った。特に、昭和初期の描写の鮮やかさは、今までになかったタッチだった。昭和の初めといえば、写真でもモノクロしかないし、当時の探偵作家でさえも、描写をあえてモノトーンで描いているような印象すら受ける。しかし、広瀬のタッチは、色鮮やかに、たとえば銀座の町並みを描き出し、女たちの化粧法についてまでも言及する。ううむ、と唸った。復刊ブームの昨今、広瀬正の再復刊が待たれる。
追記:この文章は2008年5月に書かれたものですが、その後、見事復刊にいたりました。
コメント (2)
今晩は、初めまして。
僕はSF小説が大好きで、SFイラストを検索しているうちに、このサイトに辿り着きました。どうぞ宜しく。
素敵なイラストが目白押しですね。特に、『マイナス・ゼロ』と『夏への扉』は、お気に入りの時間SFなので、イラストにしてくれて、とても嬉しく思います。両作品の挿絵や表紙絵にピッタリだと思います。
実は僕、もう二つ、お気に入りの時間SFがあります。今日泊亜蘭の『光の塔』と、ハリイ・ハリスンの『テクニカラー・タイムマシン』です。前者は時空を超えた未知の侵略者との戦いを、後者は映画撮影のために過去の世界を訪れたロケ隊の珍騒動を描いた作品です。両作品とも、とても面白いので、興味があったら、一度読んでみて下さい。お勧めですよ。
ではまた。
Posted by: テラ87 | 2010年1月 9日 18:15
日時: : 2010年1月 9日 18:15
>テラ87さん、
とっても楽しいコメントをありがとうございます。今日泊さんの『光の塔』は、確か広瀬正が大絶賛してた小説ですよね。気になっていました。ハリィ・ハリスンもチェックしてみます。
今年の5月24日から一週間、SFを中心とした文学作品をモチーフにしたイラスト展を四ッ谷で開催しますので、もしお近くでしたらぜひお立ち寄りください。詳細は後日サイトでアナウンスします。
Posted by: YOUCHAN
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2010年1月10日 02:03
日時: : 2010年1月10日 02:03