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2009年11月25日
大事な仕事

仕事に優劣はつけない。つねに誠実に描く。これをモットーにしていることは今も昔もずっとかわらない。けれど、ことヴォネガットに関しては別。カート・ヴォネガットが自分にとってどれだけ重要かはもう今更言うまでもない。つらいとき、救ってくれる。楽しいとき、共感する。日々のささやかなできごとにほろりときてしまう。遠いアメリカの地で生まれ育った異国の作家だけれど、わたしにとっては最高峰に位置する。
日本では早川書房からずーっとずーっと和田誠さんのこれまたすばらしい装丁でほぼすべての作品が出版されている。翻訳は伊藤典夫・浅倉久志の両氏。特に中期以降の翻訳は浅倉久志訳でほぼ網羅されており、ほろにがい本編を読み終えた後はいつだって浅倉久志氏の「訳者あとがき」が心優しいカーテンコールを引き受けてくれていた。
と言った具合に、本当に大好きな作家なのだけれど、本日発売のSFマガジン50周年記念号PART1に収録されたヴォネガットの短編「明日も明日もその明日も」の扉イラストを不肖ワタクシに描かせていただいた。和田誠さんには足下も及ばない。が、雑誌収録ということで大目に見ていただいたのだと思う。本当に光栄で光栄で、どうしようという気持ちでいっぱい。
気持ちだけはいっぱい込めた。初めて読むかも知れない方のネタバレになるような扉にはしなかったつもり。イメージも大きく壊さないようにしたと思う。そして好きなモチーフを盛り込ませていただいた。ヴォネガットファンの皆様、和田誠ファンの皆様、どうかどうかご容赦ください(わたしも和田さんの大ファンなんです)。
SFマガジン、50周年おめでとうございます。
投稿者 YOUCHAN : 15:15 | コメント (0)
2009年11月16日
音楽の映画
旅行記は落ち着いてから改めて書くので、しばしお時間をください。(いろいろな方にお世話になりました)。
差し挟む形で今書いておこうと思ったのは、三本続けてみた映画が全て音楽のドキュメンタリーだったから。先月末に観に行ったのが、マイケル・ジャクソン「This Is It」、先週の金曜日はぎりぎり滑り込みセーフで「あがた森魚ややデラックス」、そして土曜日は「アンヴィル!」という具合。今、観たい映画が音楽モノだけっていうのはどうなのか解らないけど、ずーっと以前みたトーキング・ヘッズ「Stop Making Sense」で実感した迫力と鮮烈な記憶もあったので、やはり音楽モノは(音のイイ)映画館で観ておくべきだと思った。ただ、マイケルとあがた森魚とアンヴィルってものすごく違うなぁとは思った。

「THIS IS IT」(音が出ます)
まず、マイケル映画。これは映画として撮ったモノではないので、正直なところ、出来としてはどーなんだろう。なのに感動して涙が出て仕方がなかったのは、完成間近にして目の前でガラスの建造物ががらがらと崩壊してしまったような印象を、観る側も感じてしまったからに違いない。ステージの完成度が高ければ高いほど、ああどうして、音楽の神様は、たった一回だけでもマイケルに上演のチャンスを与えてくれなかったのかと。もうね、切なくて悲しくて、マイケルの無念を本当にひしひしと感じてしまったからだと思う。2週間限定が更に2週間延びたのは、肩すかしを食らったような気もするけど、できればもう少し冷静になって観に行きたいと思った。出来れば、マイケルファンがたくさん詰めかけるような、できるだけ都心に近い劇場がいい。
わたしは横浜で観たけど、ちょっとお客さんのノリが悪い。シャイというか。なんとか拍手ができたのはよかった。お客さんのノリがクオリティを左右する、ライブの感覚に近いイレギュラーな映画だと思う。

「あがた森魚ややデラックス」(音は出ません)
そしてあがたさん映画。シアターNで東京での上映最終だったので、万難排してなんとか駆けつけた恰好だった。そしたら、最終日のスペシャルゲストとしてあがたさんと監督さんが舞台挨拶にやってきたのだ! これは盛り上がったねぇ!
映画では、説明がほとんどなされないので、このコメントを喋っている人は誰で、あがた森魚とどういう関係の人か等が解りにくかった。ただ、マイケル・ジャクソン映画とは違って、おそらくあがた森魚に興味のある人しか観ない映画であることを考えれば、まぁいいのかなとも思う。画面の切り替わりも早いので、聞き逃したコメントや見落としたシーンも結構あった。もうすこしのんびりしてもいいのかも。曲目くらいは字幕で出してもいいのになぁ。
というのがあとから思った感想なんだけど、観てる最中はもう釘付け。還暦を迎えたこのおじさんが、泣いたり笑ったり怒ったりして、コロゲながらもマイクの前に立っている。なんかいっぱいもめてる。いっぱい悩んでる。だけどギターを抱えてマイクの前に立つと、そんなことは些細なことになって後回し(にしてるように見える)。エネルギーの塊だった。だから観てる間、ずーっと画面から目が離せなくて、そのエネルギーにあてられてしばしぼーっとしてしまう瞬間があった(その瞬間にいろんなものを観る側が取りこぼしてしまうのだ! 嗚呼!)。生きてるってすばらしい。すごいよ。すごい。あがた森魚は「日本少年」からずーっと歌ってることにブレがないのがすごい。フォークでもタンゴでもボサノヴァでもロックでもヴァージンVSでも一貫してる。どうしようもないほど、一貫してるんだ。

「アンヴィル! 夢を諦めきれない男達」(音が出ます)
さいごはアンヴィル。ドキュメンタリー映画としての出来も、構成も、多分三本の中で一番良くできてると思った。30年間、とにかくメタルしかやり続けられるものがない、これまたおじさんたちの切ない物語。奮起して、オファーが来て、鼓舞して、乗り込んで、現実の厳しさに打ちのめされて、ダウンして、でも奮起して......のくりかえし。人生ってどうしてままならないんだろう、あーもう。と思ってる中、マニアが多いのか、裾野が広いのか、日本って国は。ラストではすがすがしい涙がぽろぽろとこぼれた。
マイケルは死んでしまったけど、あがた森魚とアンヴィルは現役だ。3本のウチ、2本の映画の主人公達は、今もどこかでステージに上がっている。それがとても嬉しいと思った。今年はキヨシローやトノバンがこの世を去ってしまって、一体どうなってるんだ!?って悲しい気持ちになったけど、今ステージに上がっているひとたちを、今観ることが出来るなら、今観に行きたいってほんとに思った。
生きてるってすばらしい。
投稿者 YOUCHAN : 21:17 | コメント (0)
2009年11月 7日
[旅行記]阿房の前日羽田入り[11/2]
去る11月2日~6日まで遅い夏休みを取った。出雲~広島~岡山を回ってきたのであるが、その経緯とできごとを、なるべく記憶が薄れないうちに書き留めておく。(なお、2日の記録は写真がありませんが、3日以降はあります)
なんにも用事がないけれど、汽車に乗つて松江へ行つて来ようと思ふ。百間先生の「松江阿房列車」と同じ11月3日に立とう!と思い立ち、日程優先でごりごり予定を進めていたのだけれど、予約した夜行がよりによって喫煙車両とわかり、しかも超人気列車だったのでチケットはソールドアウト。禁煙車両への変更も出来ず、日程を変えようにも仕事の進行をその日程で組んでいるため、変更が難しく、結局夜行を断念、キャンセルする。
さてそれではどうするか。いろいろルートを調べるも、どうも出雲に新幹線など列車で向かうのは時間が非常にかかり、朝から出ても現地到着が遅くなり、それではまともな参拝も出来ない。ええい、だったら飛行機で現地入りしてやる!と思うに至る。すでにもう阿房列車では無い。ただの阿房である。
ところが、出雲行きの飛行機の本数がこれまた少ない。朝を逃すともうアウト。ああもう、だったら朝7:35羽田発の飛行機に乗ればいいじゃん。しかしさすがに当日にネコを預けることは難しく、前の日に預けるとなると行ったり来たりで我々が疲れるし、そんな朝早くから横浜から空港まで行けるとは思えない。だったら前日にネコも預け、我々も前泊すればよい。百間先生だって船旅で朝起きる自信がないからと前泊したではないか。よし、それでいこう。
ということで、2日の午後にネコをいつものネコホテルもとい、かかかりつけの獣医に預け、羽田へ向かった。ホテルについてチェックアウトを済ませてからご飯を食べようと思ったが、周辺にはお店もないので、下見もかねて空港に行くことにした。わたしは羽田空港が大好きなのだ。用事が無くても空港に行くことがある。
空港で食事をすませ、展望デッキに上ってみるとすごい雨風になってビックリした。コレは大変、とおもっていると、羽田に居を構えるKちゃんからメールが。Kちゃんからは、羽田に来るならお茶でもしようと声をかけていただいていたのだが、こんなに雨がひどくては......と思っていた矢先だった。メールには「せっかくだからウチでお茶しよう。迎えに行きます」と。ありがたい。Hさん運転の車でわざわざ空港まで来ていただいた。
Kちゃん宅でお茶とケーキをいただいていると、NORIがとつぜん「うぐぅ」と呻いた。見ると銀色の変な形の金属片が。すわ異物混入か!?と思っていると「......歯のかぶせがとれた......!」 どうしてわざわざここで取れる!?
どどどーするよ!?と慌てていると、Hさんから「岡山で治してもらえばいい」とナイス提案が。おお、そうだ、そういえば岡山に名医が居たよ、ギターを抱いた架空楽団歯科が! 早速mixiメッセージを送ると予約を快く入れてくださった。「伝説の銀かぶせ」と名付けられたこの騒動、治療は5日の岡山入りまでお預けとなる。3日の玉造温泉でのお食事は、4日の広島のお好み焼きは無事にクリアできるのか!? 神のみぞ知る。
KちゃんHさん宅を辞し、羽田のホテルに戻った。明日は七時半のフライト、早く起きなくてはいけない。タイマーを合わせ、休む段になって部屋のライトをどう消すのかがわからず、やみくもにパネルを操作してようやく灯りを消したのであった。続く。
投稿者 YOUCHAN :