猫の避妊

直木賞作家の坂東眞砂子氏が、飼い猫に避妊手術をさせずに、
生まれた子猫を崖から放り投げて殺しているという衝撃的なニュース
2回目ですが、これを読むたび、大福の避妊手術のことを思い出します。

大福は、スコティッシュ・フォールドという品種の猫で、
どうして耳が小さいのかはよく知らないで飼い始めた子です。
初めて飼った猫が大福なのです。

大福

ただ、大福は身体の大きさが生後6~7ヶ月くらいの猫くらいしかなくて
とても小柄です。ごはんもあまり沢山食べません。
寝るときに、寝息というかいびきをかきます。

あとから獣医師に聞かされて愕然としたのですが、
スコティッシュ・フォールドという品種は、
軟骨異常のせいで耳が小さく、そのため、生まれつき
関節に異常が起きる子も少なくなく、
テーブルの上に飛び乗れない子も沢山いるのだそうです。
幸い、大福は歩行に支障がない状態で成猫に育ちました。
もうすぐ8歳になりますが、今も元気に走り回れます。

しかし、ひとつ問題がありました。

大福は気道が細いため、麻酔をかける際に必要な
気道を確保することがとても難しいということでした。
常備してあるチューブでは気道を通らないため、
特別に一番細いチューブを取り寄せなくてはならないのです。
また、血中アルブミン値が非常に低いのも問題だということでした。

身体も小さいため、おそらく妊娠しても
母体が持たない、というのが医師の見解でした。

そのため、ウチでは、オスの大賀の虚勢手術をすることにして、
大福は麻酔のリスクを避けたほうがいい、ということになりました。

しかし、昨年、あまりにも大福の発情が激しすぎるため、
調べてみた所…卵胞膿腫でした。
交尾のない状態がずっと続いていたため、起きてしまった炎症です。
避妊をしないと、こういう危険があるのですね。

不幸中の幸いか、発情になると食欲が増えた大福は、
血中アルブミン値が正常値にまで上がるようになり、
手術には耐えられるだろう、というのが医師の見立てでした。
私達は決意し、リスクが普通の猫の避妊よりもずっと高いけれど
大福の手術を決意しました。

手術の前の日は、もしかしたらこれが最期になるのかもしれない、
と涙が出て仕方がありませんでした。

どうしよう、どうしよう、と。

しかし、先生の腕は確かでした。
エリザベスカラーも必要のない見事な手術でした。
「猫は患部を舐めて当たり前だから、縫い目が外に出ないよう縫合します」
ということで、手術直後にお腹を見ると、縫い目が見えないのです!

スゴイ!

「エリザベスカラーのストレスは深刻だから」ということのようですが
腕がなければこんなことできません。

「とはいえ、大福ちゃんが大賀ちゃんとじゃれ付いたり、
高いところにジャンプすると腹圧がかかり危険なので、
ケージを作って大福ちゃんを隔離してください」
と指示されました。

大福は、これまでケージになんて入って生活したことのない子です。
でも、命に関わること。上手くいくか解らないけど、
入院は1日だけなので、大福がいない間に、
ホームセンターに行って、ケージを調達し、
リビングに「大福のおうち」をこしらえました。

これが大福が入っていたケージです。
クリックすると大きめの画像がポップアップします。

ケージにはじめて入れられた大福は、にゃあにゃあずっと鳴いています。
人の姿が見えなくなるとまた鳴くので、いたたまれなくなったわたしは
大福がリビングのケージにいる間中、ずっと傍にいることにしました。
仕事環境もリビングに移し(デスクトップパソコンを移動)、
寝るときも布団を大福の傍に敷いて過ごしました。


そんなことがあったのが、ちょうど今から1年前です。

現在の大福は、元気です。人に甘えることがとても上手になりました。
わたしの必死の看病が利いたのかどうかはわかりません。
が、避妊手術をしてから性格が柔らかくなったのは確かです。


坂東さんには、十把一絡げで避妊や去勢を批判して欲しくない。

大賀の去勢のときも、心配で、申し訳なくて、ごめんね、って
とてもつらかったことも付記しておきます。

都会のマンションで猫を飼うこと自体、人間のエゴです。
しかし、猫にとっては、そういう飼い主とめぐり合ったことも運命です。
5000年の昔から、人と寄り添うことで生きる道を選んだ生きもの、
それが猫です。犬は1万年だそうですよ。

そして、猫は肉食です。
本来なら、ネズミや小動物を獲って内臓まで全部食べるのが自然だったはず。
しかし、現代は不自然です。
彼らにはキャットフードしかあげていません。
ネズミの確保が難しい現代では、キャットフードが完全栄養食だから。

キャットフードしか食べれないなんてかわいそう、と
肉食動物の猫に人の食べ物をあげる人が絶えない現状があるそうです。
その都度、「食べることが幸せ、というのは人の価値観でしかない。
それよりも猫と遊んであげるほうが、猫にとってはもっと幸せなことですよ」
と、キャットドクターは諭すのだそうです。

ということで、ウチのネコは去勢も避妊もしました。
でも、大福と大賀は、ウチにとってはかけがえのない存在です。
それは胸を張って言えるよ。坂東さん。

ちょっと長文になりました。