音楽の映画

旅行記は落ち着いてから改めて書くので、しばしお時間をください。(いろいろな方にお世話になりました)。

差し挟む形で今書いておこうと思ったのは、三本続けてみた映画が全て音楽のドキュメンタリーだったから。先月末に観に行ったのが、マイケル・ジャクソン「This Is It」、先週の金曜日はぎりぎり滑り込みセーフで「あがた森魚ややデラックス」、そして土曜日は「アンヴィル!」という具合。今、観たい映画が音楽モノだけっていうのはどうなのか解らないけど、ずーっと以前みたトーキング・ヘッズ「Stop Making Sense」で実感した迫力と鮮烈な記憶もあったので、やはり音楽モノは(音のイイ)映画館で観ておくべきだと思った。ただ、マイケルとあがた森魚とアンヴィルってものすごく違うなぁとは思った。

this is it
THIS IS IT(音が出ます)
まず、マイケル映画。これは映画として撮ったモノではないので、正直なところ、出来としてはどーなんだろう。なのに感動して涙が出て仕方がなかったのは、完成間近にして目の前でガラスの建造物ががらがらと崩壊してしまったような印象を、観る側も感じてしまったからに違いない。ステージの完成度が高ければ高いほど、ああどうして、音楽の神様は、たった一回だけでもマイケルに上演のチャンスを与えてくれなかったのかと。もうね、切なくて悲しくて、マイケルの無念を本当にひしひしと感じてしまったからだと思う。2週間限定が更に2週間延びたのは、肩すかしを食らったような気もするけど、できればもう少し冷静になって観に行きたいと思った。出来れば、マイケルファンがたくさん詰めかけるような、できるだけ都心に近い劇場がいい。

わたしは横浜で観たけど、ちょっとお客さんのノリが悪い。シャイというか。なんとか拍手ができたのはよかった。お客さんのノリがクオリティを左右する、ライブの感覚に近いイレギュラーな映画だと思う。


ややデラ
あがた森魚ややデラックス(音は出ません)
そしてあがたさん映画。シアターNで東京での上映最終だったので、万難排してなんとか駆けつけた恰好だった。そしたら、最終日のスペシャルゲストとしてあがたさんと監督さんが舞台挨拶にやってきたのだ! これは盛り上がったねぇ!

映画では、説明がほとんどなされないので、このコメントを喋っている人は誰で、あがた森魚とどういう関係の人か等が解りにくかった。ただ、マイケル・ジャクソン映画とは違って、おそらくあがた森魚に興味のある人しか観ない映画であることを考えれば、まぁいいのかなとも思う。画面の切り替わりも早いので、聞き逃したコメントや見落としたシーンも結構あった。もうすこしのんびりしてもいいのかも。曲目くらいは字幕で出してもいいのになぁ。

というのがあとから思った感想なんだけど、観てる最中はもう釘付け。還暦を迎えたこのおじさんが、泣いたり笑ったり怒ったりして、コロゲながらもマイクの前に立っている。なんかいっぱいもめてる。いっぱい悩んでる。だけどギターを抱えてマイクの前に立つと、そんなことは些細なことになって後回し(にしてるように見える)。エネルギーの塊だった。だから観てる間、ずーっと画面から目が離せなくて、そのエネルギーにあてられてしばしぼーっとしてしまう瞬間があった(その瞬間にいろんなものを観る側が取りこぼしてしまうのだ! 嗚呼!)。生きてるってすばらしい。すごいよ。すごい。あがた森魚は「日本少年」からずーっと歌ってることにブレがないのがすごい。フォークでもタンゴでもボサノヴァでもロックでもヴァージンVSでも一貫してる。どうしようもないほど、一貫してるんだ。


the story of Anvil
アンヴィル! 夢を諦めきれない男達(音が出ます)
さいごはアンヴィル。ドキュメンタリー映画としての出来も、構成も、多分三本の中で一番良くできてると思った。30年間、とにかくメタルしかやり続けられるものがない、これまたおじさんたちの切ない物語。奮起して、オファーが来て、鼓舞して、乗り込んで、現実の厳しさに打ちのめされて、ダウンして、でも奮起して......のくりかえし。人生ってどうしてままならないんだろう、あーもう。と思ってる中、マニアが多いのか、裾野が広いのか、日本って国は。ラストではすがすがしい涙がぽろぽろとこぼれた。

マイケルは死んでしまったけど、あがた森魚とアンヴィルは現役だ。3本のウチ、2本の映画の主人公達は、今もどこかでステージに上がっている。それがとても嬉しいと思った。今年はキヨシローやトノバンがこの世を去ってしまって、一体どうなってるんだ!?って悲しい気持ちになったけど、今ステージに上がっているひとたちを、今観ることが出来るなら、今観に行きたいってほんとに思った。

生きてるってすばらしい。