どろぼう熊の惑星


ラファティー R・A・ラファティの短編小説集より。

わたしとラファティとの出会いは結構古い。「九百人のお祖母さん」がそれで、15年以上前になる。しかしながら、かなりの間、ブランクがあった。読んでも読んでもなぜか頭に入ってこないのだ。どこが面白いのかがわからないうちに、ずーっと放置状態になっていた。そして度重なる引越しの途中で紛失した。古本屋に売ったのかもしれない。廃品回収に出したのかもしれない。

ところが、ここ数年、ラファティの長編が出たりして、また気になってきた。今なら読めるかも......。と思ったが、時すでに遅し。「九百人のお祖母さん」はとっくの昔に絶版状態になっていた。失敗したぁと思っていた矢先、神保町で「九百人のお祖母さん」との"再会"を果たす。上製本ではあったが、本は出会ったときに入手するのが正しい。ということで迷わず入手、表題作から読み始める。......あれ? 面白い。

結局、最後まで面白く読めた。が、大方の評価にあるような「爆笑する」という感じではなかった。シュールさを味わう感じかなぁ、というのが感想だった。そして「どろぼう熊の惑星」に進んだ。あ、こっちのほうが読みやすいかな。相変わらず、残酷な描写も多いし、シュールだけど。

......と思っていた途中、頭の中で「かちっ」とスイッチが入った。ああ、そうか、わかった! ラファティの味わい方を掴んだ瞬間だった。このラファティ・スイッチが入った途端、面白いのレベルがぎゅーんと上がった。気がついてしまったのだ。スイッチが入ってよかったなぁ。

というわけで、展示するイラストは、この「ほら吹きおじさん」の軽妙な語り口てんこ盛りな雰囲気を出すため、ペン画で描くことにした。首ちょんぱのシーンだって、こう描けばほら、ちっとも残忍じゃない。おそらく、グリム兄弟やアンデルセンのように、L・A・ラファティという作家の"おはなし"は、いつか伝承される類のものになるだろう。小鳥が千年に一回、巨大な岩をつつきにやってきて、大きな穴があく頃には。