その前夜

その前夜
良い時候なので家内と共に表まで送っていった。一杯機嫌の古日はそこで又
ゆつくりして立ち話をしたり野良猫を構つたりして帰つていつた。...(略)...
敵の飛行機が如何に残酷であつてもこの小さな家をねらふと云う事は有るま
いと家内に話した。家内はさう云えばお隣の立ち樹一本ですものねと云つた。
(内田百間/東京焼尽より)