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2006年7月21日
渦中の人
先日、重松清さんの「流星ワゴン」を一気に読み終えた。
とても面白い展開に、ページをめくる手が止まらない。
なのに、どうして読後感がすっきりしないのか。
NORIちゃんも、「流星ワゴン」にハマった。
「これを読むために電車に乗るのが楽しみ」とまで言っていた。
けれど、読了後、彼は「うーん」といったきり、言葉を失った。
ところで、先々月の個展の人待ち時間で、
わたしは梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」を読んだ。
児童文学ということもあり、平易な表現で綴られているし、
とても薄い本だから、ライトに読めていいかなと思ってとっておいたのだ。
読み終わるのに時間はかからなかった。
ところが、読後感は、その日一日の私を占領してしまった。
「流星ワゴン」と「西の魔女が死んだ」には、共通点がある。
1) 大人とこども・親と子・家族の関係が描かれている
2) 死について触れられている
3) いじめ問題が関係している
4) ファンタジックな要素がありながら、甘くならない展開になっている
なにが違うのだろうか。
文学作品を比較していいとは思わないけれど、
共通点がここまであるのに、響くものが違うのはなぜだろうか。
ずっと考えてきたけれど、一ついえることは、
作家の立場なのかもしれない、と思った。
重松さんは、「自分が親になったから書けた作品」とあとがきにものこしている。
つまり、『渦中の人』なんだ。
渦中の人が、自分自身と重ね合わせて描いているから感動的であり、
身につまされるし、リアルなんだと思う。
一方の、梨木さんは、ご自身のことをあまり語らない方なので、その実態はわからない。
インタビューをほとんど受けない、という話を聞いた事がある。
だから、どういう立場の方かはわからないけれど、
「りかさん」「からくりからくさ」「家守綺譚」そして「西の魔女が死んだ」、
これらに共通する、湖のように森閑としている、あの感じ。それから、希望。
彼女は、『渦中の人だから「西の魔女が死んだ」を書いた』ようには思えないのだ。
もしかしたら「流星ワゴン」は、男性作家らしい作品の典型なのかもしれない、と思う。
あれだけ長い話を、飽きさせずにぐいぐいひっぱる展開、
魅力的なキャラクター(特にチュウさん)。
読んでよかった、と思った。いい友達に会えたような感じ。
ただ、自分は『渦中の人間ではない』から、釈然と出来ないのではないだろうか。
わたしは、「流星ワゴン」は「もしもあのとき~してたら」の「たら」「れば」について
描いた物語として捕らえ、途中くらいまでは実は大きく感情移入していた。
けれど、後半に向かうにしたがって、その感情移入が難しくなってしまった。
だから「うーん」となってしまったのではないか。
一方の「西の魔女が死んだ」は、読んだ後、しばらく放心状態が抜けなかった。
私の心のある部分を、そっとなでられたような感覚。
梨木さんの作品は、どれをとってもそういう読後感がある。
上手くいえませんが、なんとなく、そんな気がしました。
ところで「西の魔女が死んだ」は、文庫版のほうがオススメです。
先日、先に発売になっていた、単行本の方を書店で見かけたので、手にとってみたら、
ラストの大切な2行の扱いが、文庫版のほうが優れていたので。
あの2行に、涙したのだから、わたしは。
流星ワゴン
重松 清 
西の魔女が死んだ
梨木 香歩 
投稿者 YOUCHAN : 2006年7月21日 01:23
頂いたコメント
YOUCHANさん、こんばんは。
久しぶりにこちらにお邪魔して、息が止まるくらい衝撃を受けました!だって、この二冊、私がこの一年で最も心に残った本だったから。
梨木さんの「西の魔女が死んだ」は中学生の娘に薦められて読みました。
私の中の少女な部分に沁みた大切なお話。でも、大人になった今読んでも 顔を上げて前に進む勇気をそっと与えてくれるような気がしました。
文庫本で読んだので、単行本と最後の二行が違うとのご指摘に、そちらも手にとってみたくなりました。
「流星ワゴン」こちらは夫に薦められて。
私の読後感は意外と爽やかでした。
悲惨な今の現実は変わらないけれど 僕 の心持ち次第で同じ現実が違った未来に繋がっていく、そんな期待を持たせてくれて。
私は後半に行くほど感情移入が激しくなってきていました。
確かに、私にとって「流星ワゴン」の世界は渦中と言えるほど身近に感じられる世界だったから、身につまされたのかもしれません。
お隣さんの家族の隠された身の上話でも聞くような感じかしら?
自分の現実を受け入れる為に腹をくくる必要性を感じた、と言ったらあまりにも訳知り顔に聞こえますか?
投稿者 たぱす : 2006年7月23日 00:52
なるほどー。面白いですね。
そうそう、「流星ワゴン」は、『面白いハリウッド映画を見た後の感じに似てるなぁ』と、実は読み終えて最初に思いました。
なにかがー! 何かがー足らないー! みたいな。いや、すんごく面白いんですが(笑)
投稿者 YOUCHAN : 2006年7月23日 13:19
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